<ボクシング>異色のリーゼント王者が事実上の引退危機
11月26日になって、ようやく和気が古口ジムに現れて、一連の行動について謝罪したが、古口会長は、ジムの責任者である自身に何の相談や確認もないまま、独断でTBS側に「リゴンドー戦はできない」と伝えた事実と、その後連絡を一切絶って、無断でジムでの練習を欠席し続けた無責任な行動を問題視。12月2日には、和気本人を呼びだして、今後について改めて会談を持ったが、古口会長は、今回の無責任な行動がジム関係者やスポンサーに多大な迷惑と、損害を与えたことを伝えた上で、今後、関係各位への謝罪など和気とジムとの信頼関係が回復しない限り、東洋王座も返上、事実上の引退扱いとなる可能性を通告した。「今のままでは試合を組めない。今後どうするかは自分で考えなさい!」と突き放した。 和気自身は、リゴンドー戦を断った理由について、「ここまでフジテレビにお世話になってきたし、来年には世界戦をさせてくれるという話も聞いた。まずは世界チャンピオンになってからリゴンドーとは統一戦として戦えばいいと考えていた」と説明。一切連絡を絶って、ジムで練習を行わなかった無責任な行動に対しては「判断を間違っていた」と謝罪した。すでに12月30日の東洋王座の防衛戦はキャンセルとなったが、それを知らなかった和気は、「え? それもなくなったんですか」とショックを隠せない様子も見せた。 和気も、ある意味、フジvsTBSのボクシング興業戦争の間に挟まれた被害者とも言える。古口ジムサイドも、一度は契約した東洋王座戦の破棄を、そのプロモーターに正式に認めさせてからリゴンドー戦へ舵を切るべきだった。しかし、17歳で岡山から古口会長にスカウトされて以来、数年にわたって住居費を含め公私にわたって面倒を見てもらい、新人王戦で2度敗れながら、東洋王者、世界ランカーになるまでサポートを受けてきた古口会長へ、何の相談もせぬまま単独行動をしたのは、27歳の分別のあるプロボクサーの行動として問題があることは間違いない。世界初挑戦で、最強王者リゴンドーへ挑むことは、無謀との賛否はあるかもしれないが、それは、ジム内で解決すべきことで外部の人間と決めることではないだろう。ローマン・ゴンザレスのチャレンジを受けた前WBC世界フライ級王者、八重樫東(大橋)のように逃げない姿勢を示すことは、プロボクサーとして本来、あるべき姿でもある。古口会長も、「和気は最高のチャンスを逃した。私には、その彼の考えが理解できない」と語っていたが、やりたくとも“試合ができない”という事実上の引退危機を迎えた和気が、今後、どのような選択をするのか。年末に盛り上がる世界戦ラッシュの裏で一人の人気ボクサーが大きな岐路を迎えている。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル) 【和気慎吾(わけ・しんご)】1987年7月、岡山生まれの27歳。岡山商大付属高校時代に古口会長にスカウトされ、2006年にプロデビュー。それまで3敗していたが2013年3月に敵地の神戸で小國以載(現日本同級王者)が持つOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王座に挑戦してTKO勝利。以降、王座を4度防衛中。WBA、WBOのSバンタム級3位にランクされている。16勝(9KO)4敗2分。サウスポースタイルのボクサーファイター。古口ジム所属