絶対に助からない...「世界の終わり」をテーマにした映画(1)謎の球体が地球に接近…人類の未来が真っ暗に
「もし明日世界が終わるとしたらどうする?」-。誰でも一度はそんな会話を交わしたことがあるだろう。その意味で、世界の終わりという究極の悲劇は、古今東西、人々の想像力の源泉になってきたのだ。そこで今回は、世界の終わりを描いた映画をセレクト。核戦争や小惑星の衝突など、バラエティに富んだ5つのシナリオを紹介する。第1回。(文・編集部)
『地球が静止する日』(2008)
監督:スコット・デリクソン 脚本:デビッド・スカルパ 出演:キアヌ・リーブス、ジェニファー・コネリー、ジェイデン・スミス、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム 【作品内容】 ある夜、プリンストン大学で教鞭をとる宇宙生物学者ヘレン・ベンソン(ジェニファー・コネリー)のもとに、アメリカ政府のエージェントがやってきた。強制力のある緊急招集であることを伝えられたヘレンは、1年前に亡くなった夫の連れ子ジェイコブを隣人に預け、早速公用車に乗り込む。 政府が彼女を招集した理由。それは、木星外で観測された「謎の球体」への対策のためだった。小惑星とおぼしき物体は、現在、信じがたい速度で地球に向かって移動中。地球に衝突すれば人類滅亡は目に見えていた。 と、その時、セントラルパーク周辺がまばゆい光に包まれる。球体が地球に到着したのだ。しかし、球体は上空で静止。中から巨大ロボットと、人間の姿をした宇宙人クラトゥ(キアヌ・リーブス)が降りてきた―。 【注目ポイント】 「完新世は終わった。我々は人新世(ひとしんせい)の中にいる」―。 2000年、化学者のパウル・クルッツェンは、雑誌の中でこのような報告を掲載した。 彼が提唱した「人新世」とは、ジュラ紀や白亜紀といった地質学上の時代区分(地質時代)の1つで、人類の活動が地球環境に大きな影響を与えた時代のことだ。そういった意味でこの『地球が静止する日』は、いわば人新世に生きる人類に警鐘を鳴らす作品といえるかもしれない。 監督を務めるのは、『ドクター・ストレンジ』(2017)のスコット・デリクソン。キャストには、『マトリックス』(2009)のキアヌ・リーブスや『ビューティフル・マインド』(2001)らが名を連ねる。 『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)で知られるロバート・ワイズ監督の名作『地球の静止する日』(1951)をリメイクした本作。前作が全面核戦争をテーマとしているのに対し、本作は、環境汚染や生物多様性の喪失といった人類の「原罪」が主なテーマとなっている。その点、前作とは全く異なる作品といってよいだろう。 とはいえ本作、内容が薄っぺらかったり人物描写が表面的だったりとテーマの割にチープな映画になってしまっており、SNS上では「何がしたかったのかよく分からない」「ご都合主義なストーリー」といった辛辣な感想が並ぶ。大風呂敷を広げた結果、細部の描写がおろそかになってしまったようだ。 なお、ラストでは、義理の息子のために自身の命を投げださんとするヘレンの姿を見てクラトゥが人類の存続を決意する。彼女の愛が人類を救ったのだ。21世紀を生きる私たちはクラトゥの期待に応えられるだろうか。
編集部