残虐描写のつるべ打ちも…実は原作どおり？ 映画『シン・デレラ』は童話をいかにアップデートしたのか？ 考察＆評価レビュー
シャルル・ペローの「シンデレラ」をベースに、映画『シン・デレラ』が現在公開中だ。“ダーク・シンデレラ”による残忍な復讐劇を描いた本作。今回は、容赦ない復讐劇や、フェアリーゴッドマザーの正体に迫りながら、本作のラストシーンについて徹底的に考察していく。（文・ニャンコ）【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】 【写真】残虐描写が恐ろしい…貴重な未公開カットはこちら。映画『シン・デレラ』劇中カット一覧
情け容赦ないゴア描写
本作の見所は、復讐の鬼と化したシンデレラが巻き起こす情け容赦ないゴア描写である。 幸せと成功の象徴であるガラスの靴を凶器と変え、シンデレラを侮辱し嘲笑った人間たちを次々と血祭りにあげていく姿に驚きが隠せなくなるほどである。 特に舞踏会で繰り広げられる惨劇は、ゾンビ映画でよく見かける大殺戮に匹敵する残酷さと生々しさがあり、観賞する映画を間違えてしまった、と錯覚するほどである。 しかし、そんな生々しいシンデレラによるゴア描写も、原作のシンデレラのストーリーを知ると、すんなり受け入れることが出来るから不思議である。 というのも、一般的に知られているシンデレラの感動ストーリーは、グリム兄弟版であり、原作はシャルル・ペロー版なのである。シャルル・ペローは、17世紀のフランスの詩人で、「ペロー童話集」の作者として知られている。 「ペロー童話集」のシンデレラは、本作顔負けの非常に恐ろしいストーリーというから驚きだ。 例えば、ガラスの靴の持ち主と結婚したい王子の元にシンデレラの義理の姉たちが来て、姉たちが靴を履こうとする場面では、靴が入らない娘たちに母親が「足を切り落とせ」と命令する描写がある。 また、怪我をした足で松葉杖をついてシンデレラの結婚式に参加した姉たちの目を、小鳥たちが突いてくり抜いてしまう…など、本作の原作となった「ペロー童話集」のシンデレラは、本作に負けず劣らずホラー描写に溢れているのである。
フェアリーゴッドマザーの正体と目的
本作で最後まで謎に包まれていたフェアリーゴッドマザーの正体だが、彼女はいったい何者だったのだろうか。 フェアリーゴッドマザーのまるでゾンビのような造形は、邪悪な存在そのものであり、彼女が現実世界とは異なる世界の住人であることが想像できる。おそらくフェアリーゴッドマザーは、地獄もしくは暗黒世界の住人なのだろう。 そんなフェアリーゴッドマザーだが、配下として3人の従者を引き連れていた。また、ラストシーンでフェアリーゴッドマザーは、シンデレラを自らの配下に加えようとしていた。 そのため、フェアリーゴッドマザーの目的は“本を通じて相手の願いを叶え、代償として魂を奪い、相手を支配すること”だと考えられる。 おそらくフェアリーゴッドマザーは、相手の魂を奪い、そして従者を増やすことで更なる力を得ようとしていたのだと考えられる。不可解なのはその動機である。 別世界の住人であるフェアリーゴッドマザーが何故更なる力を得ようとしていたのか…謎は深まるばかりだ。
