罰当たりと言われても 死のタブーに挑む葬儀会社の「入棺カフェ」
創業から120年以上続く千葉県富津市の葬儀会社「かじや本店」が9月から、ひつぎに入る体験会を始めた。「罰当たりだ」などの声も寄せられるというが、「普段は考えない『死』について考えるきっかけになれば」と、葬儀会社ならではの思いを込める。 ◇「落ち込んだ人こそ来て」 同社は「入棺カフェ」を同市にある社屋内に設置。ひつぎは葬儀具製造業の「グレイヴトーキョー」がデザインした華やかなもので3基用意した。体験は時間無制限で、写真を撮ることも可能だ。 グレイヴ社のひつぎを活用したいとの思いと、地元・富津のまちおこしを狙って始めた取り組みだが、人の死を取り扱う葬儀屋として特別な思いもあるという。かじや本店の平野清隆社長(48)は多くの人の葬儀を執り行う中で、自死した人の遺族とやりとりすることも何度かあり、そのたびに葬儀屋として何もできないもどかしさを感じたという。「写真撮影してにぎやかに体験してほしいとの面もあるが、人生に落ち込んだり壁にぶち当たったりした人にこそ来てほしい。一度、ひつぎに入って出てくるということは、生まれ変わった、人生がリセットできたということ。新たにまた生き直そう、と思ってほしい」と思いを込める。 ◇「死」のタブーに挑む また、ひつぎに入ることで、タブー視されがちな「死」について考える時間にしてほしいとの願いもある。「余命を宣告された時に考える人はいると思うが、普段の生活で死についてなかなか考えられない。真っ暗なひつぎの中では、残された自分の人生や、大切な人の最期を考えることもできる」と話す。 同カフェを取り上げた記事を読んだ人から「罰当たりだ」「縁起が悪い」などのコメントが寄せられたこともあったが、平野社長は「葬儀屋にできることを考えた結果」と説明する。 10月上旬時点で約20件の予約があり、若年層からの問い合わせも多いという。完全予約制で1人2200円(税込み)。予約・問い合わせは平野社長(090・4135・3072)。【田中綾乃】