森保J大迫代役に浅野&鎌田抜擢陣容の違和感
大迫とまったく同じ役割を任せられる選手はいない、と森保監督自身も公言してきた。森保ジャパンで最多タイの7ゴールをあげているだけでなく、体幹の強さを駆使したポストプレーの上手さと、味方の攻撃陣を生かす巧みなボールキープ術は、大迫だけがもつストロングポイントとなる。 大迫が1トップに君臨する戦い方を「プランA」とすれば、10月シリーズでは大迫を欠いた「プランB」を確立させる絶好のチャンスとなる。たとえばトップ下の南野拓実(ザルツブルク)より前線に近い位置にすえて、鎌田や永井と実質的な2トップを組ませることも考えられる。 あるいは南野を1トップで、久保建英(RCDマジョルカ)を6月シリーズと同じトップ下で起用して左の中島翔哉(FCポルト)、右の堂安律(PSVアイントホーフェン)と共演させる。サンフレッチェを率いたときと同じく、爆発力なスピードをもつ浅野はスーパーサブ要員となるだろうか。 いずれにしても、森保監督にはこれまでとは異なるアプローチが求められる。2次予選の開幕を前にして、日本代表監督としてワールドカップを2度戦った岡田武史氏(現株式会社今治.夢スポーツ代表取締役会長)は、森保監督が進めるチーム作りにこう言及していた。 「いまの代表は個で通用するチームになってきている。これまでにないことだと思う」 確立された組織のなかで個を生かすのではなく、最大限の個の力を発揮させ、至高の協奏曲を奏でさせることで組織となす。逆説的なアプローチを可能にしたのが、万能ストライカーの大迫と背後に並ぶ左から中島、南野、堂安のトリオの間で育まれてきたあうんの呼吸となる。 大黒柱の大迫を欠く今回の戦いで、誰が代わりに入るとしても、高いレベルで個を共演させるには時間が足りない。いつかは個を封じ込めようとする相手と対峙する、と危惧していた岡田氏は「まあ、ポイチ(森保監督の愛称)はちゃんと考えているはず」ともつけ加えてもいた。 つまり、特に攻撃面で組織ありきの戦いを導けるかどうか。目の前の相手と戦いながら、同時進行で別のプランも用意してきたかどうか。新生日本代表の船出から1年あまり。10月シリーズはモンゴルとタジキスタンに連勝するだけでなく、本当の意味で森保監督の手腕が問われる戦いになる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)