【ライブレポート】Galileo Galilei、劇と音楽が交差した感動と余韻の「TOUR M」
Galileo Galileiの全国ツアー「TOUR M」が10月25日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)でファイナルを迎えた。 【ライブ写真】豪華なセットで芝居を披露するGalileo Galilei(ほか全19枚) ■ “異邦の楽隊”Galileo GalileiがM王を追悼 「TOUR M」はGalileo Galileiが9月に同時リリースした2枚のアルバム「MANSTER」「MANTRAL」のリリースツアー。バンドの歴史を追体験できるような劇を軸にライブが進行するという、特別な演出が用意された。物語の舞台は架空の中世世界。ステージ中央に西洋式の玉座が置かれており、その背には民から尊敬されている英雄・M王が討ち取ったという巨大な熊の剥製が飾られている。観客が入場時に配布されたパンフレットを読みながら開演を待っていると、場内に“ある夜”の音声が流れ始めた。 音声で話しているのはM王と、彼が信頼を寄せるフミティ将軍。その中で突然、フミティがM王の命を奪う。フミティは自らが討ち取った巨熊の手柄をM王に奪われたことで不満を募らせ、M王の弟でありながら城の料理長として働かされているカズケウスと共謀。宴会後の酒に酔ったM王を誘い出し、襲撃したのだった。そんなストーリーを尾崎雄貴(Vo, G)がM王、岩井郁人(G)がフミティ、尾崎和樹(Dr)がカズケウス、岡崎真輝(B)が影で王を支える謎めいたオチャ大臣に扮してステージに登場し、表情豊かに表現した。続いて場面はM王の葬儀に転換。国民に見立てられた観客の前に、“異邦の楽隊”としてGalileo Galileiが登場すると、フロアから「待ってました」と言わんばかりの大きな拍手と歓声が湧き上がる。そして20分以上のプレリュードを終え、M王への追悼を込めた彼らのライブが「KING M」でついに始まった。 “ニュートラルなときの人間性”をテーマにした「MANTRAL」の収録曲が多く占めたライブ前半。雄貴は伸びやかな歌声を響かせながら、M王の眠る棺桶に向かって捧げるような仕草をしたり、指揮者のようにメンバーへ目配せしたり、ステージ上を縦横無尽に動き回った。サポートにDAIKI(G / BBHF)、大久保淳也(Sax)を迎えたGalileo Galileiは、シンセサイザーも取り入れた芳醇なアンサンブルで次々に楽曲を届けていく。「リトライ」「若者たちよ」では特にサックスが華々しくフィーチャーされてM王の鎮魂にひと役買い、「あそぼ」「ギターバッグ」ではシンガロングやクラップで場内に心地よい一体感が広がった。 ■ 魔王復活…世界征服よりも音楽を渇望 全員が一度退場したステージへ1人現れたのは、岡崎扮するオチャ大臣。Galileo Galileiの演奏を称えた彼は、M王をこの場によみがえらせると豪語する。日頃から密かに復活の薬を飲ませていたM王を“魔王”としてよみがえらせ、この世を支配するというオチャ大臣の陰謀が明らかになり、場内は禍々しい雰囲気に。そして歪んだベースが特徴的な「MANSTER」の旋律に導かれるように、雄貴扮するM王が棺桶から飛び出して復活を遂げ、国民の大歓声を浴びる。M王もとい魔王はその不思議な力で和樹や岩井を自在に操ってみせるも、オチャ大臣の世界征服の誘いには乗らず「今ワシの耳には音楽が聞こえてくるのだ」「ワシはやりたいことをやるぞ!」と宣言。そしてバンドに演奏を促し、全能感をたたえながら歌い始めた。 後半でメインとなったのは“人間の外面、他者から見たときの性質”がテーマの「MANSTER」収録曲。「CHILD LOCK」のロックサウンドを前面に押し出したアグレッシブな演奏が、魔王の凶暴性を表すように轟く。アッパーチューン「SPIN!」では観客がキャラクター“すずめちゃん”のペンライトをぐるぐる回し、ステージ上手の岩井が負けじとターン。メンバーたちもその場で弾みながら全身で楽曲を楽しんだ。その後、「ロリポップ」「PBJ」といったポップナンバーや、「ブギーマン」「ファンタジスト」といった優しい楽曲も歌いこなした魔王。音楽の力で人の心を取り戻したと思いきや、破壊衝動を思い出したかのように「ヴァルハラ」を猛々しく歌い上げ、不穏な笑い声を残して姿を消した。 ■ 今はこうしていようじゃないか アンコールが大嫌いな魔王は、観客のアンコールに悶え苦しみ、再び棺に封印される。次に目を覚ますと生前のM王の様子に戻っており、宴会後からの記憶が失われているようだ。自分の犯行がバレないか気が気でないフミティをよそに、晴れやかな表情のM王は、これまで尊大な態度を取っていたことを彼に謝罪。カズケウスにも役目を押し付けてきたことを詫び、「ワシに何かあれば次の王はお前だ」と王位継承を認めた。そしてM王はフミティとハグをして仲直り。「これから思い出すこともあるかもしれないですよね?」「ああ……だが、もうよい。今はこうしていようじゃないか」と抱擁を交わす2人に、温かな拍手が送られた。なお魔王復活の元凶・オチャ大臣はこつ然と姿を消していた。こうして国に平和が訪れ、感動と余韻を残して終劇へ。Galileo Galileiは“国民役”を務め上げた観客に向けて深々とお辞儀をした。 その後、役から解放された雄貴が改めて「アンコールありがとうございます!」と挨拶。「『何を観せられているんだ』と思われる可能性に、僕らはツアー初日に気付きました」と自嘲的に話した彼は「これまでのGalileo Galileiの歩みや人間関係、キャラクターを伝えたいなと思って、劇をやろうという話になった」「アルバム2枚も劇に向けてサウンドを作った」と裏側を明かす。さらに、自身が作曲する際に感情や出来事をファンタジーや物語に書き換えてきたことを、ライブでも表現したという。そんな彼が「楽しかったですか?」とファンに問いかけると、フロアから大きな拍手が湧き起こった。雄貴は「初日まで自信満々だったのは皆さんが受け入れてくれると思ったから。皆さんからエネルギーをもらって自信がついて、アルバム制作やライブができます。本当に皆さんのおかげです。ありがとうございます」と感謝の思いを伝えた。 そしてアンコールでは彼らが“本当のGalileo Galilei”として4曲をパフォーマンス。最後にバンドにとって大切なマインドが表れた「やさしいせかい.com」が演奏され、“二度とない”ライブは終演を迎えた。なお、アンコールにて彼らは2025年3月15日に東京・東京ガーデンシアターでワンマンライブ「Galileo Galilei “あおにもどる”」を開催すること、「MANSTER」(黒盤)、「MANTRAL」(白盤)に続く3枚目のアルバム(青盤)をリリースすることを発表。ワンマンのチケット先行予約はバンドのオフィシャルファンクラブで11月10日まで受け付けている。 ■ セットリスト □ 「Galileo Galilei Tour 2024 "Tour M"」2024年10月25日 Zepp Haneda(TOKYO) 【Prelude】~M王暗殺~ 【1部】~王国での宴~王の弔い 01. KING M 02. MANTRAL 03. リトライ 04. 若者たちよ 05. あそぼ 06. カルテ 07. カラスの歌 08. UFO 09. ギターバッグ 【2部】~M王復活~ 10. MANSTER 11. CHILD LOCK 12. SPIN! 13. ロリポップ 14. PBJ 15. ブギーマン 16. ファンタジスト 17. オフィーリア 18. ヴァルハラ <アンコール> 19. 恋の寿命 20. バナナフィッシュの浜辺と黒い虹 21. 色彩 22. やさしいせかい.com ■ 公演情報 □ Galileo Galilei “あおにもどる” 2025年3月15日(土)東京都 東京ガーデンシアター