【証言・北方領土】歯舞群島 多楽島・元島民 河田弘登志さん(4)
我々は「四島一括返還」 国より高いレベルでないと見透かされる
――誰もが当たり前に持っているふるさとが歴史や戦争に翻弄され、追い出されてしまった。帰られなくなってしまったということについては、どう考えていますか。 私は、地球上から戦争というものをなくさない限りは、こういう思いする人はなくならないだろうと思ってます、私たちだけでなくてですね。そういう理想の社会になるかわかりませんけど。こっちへ来て生活が苦しかったり、若いころは「こんなとこで、こんな仕事してるんだったら島に行ったる」と、みんな思ってました。けれども、そのころも「元島民だけの領土じゃないですよ」と私は思ってました。行って、そこに住みたいということであれば、「どなたが行ってもいいんですよ」、「住んでもいいんですよ」と。だから、元島民であるとか、一地域だとか、あるいは一生懸命やってる人たちだけの問題ではないんです。全国民の問題ですよ、この領土問題って。 我々は幾らやっても、自分で交渉するわけにいかないんですから、いかにして日本の外交交渉を支えていくか。しかも、高いレベル。国の言ってるより、下の方なら、足引っ張るようなもんでしょ。今でも、私たち組織としては、四島一括早期返還。これは自分たちの組織として決議してることです。よく「国はそう言ってないぞ」と言う人もいるんです。いるんですけれども、それじゃ、我々はそのレベルを下げたら、誰が喜ぶの。相手に見透かされるでしょう。 もう一つ、我々年とって、だんだん少なくなってくる。そのかわりに、後継者を育てるために一生懸命やってきました。今まで2世を対象にしてやってきたんです。ところが2世と言っても、もう上は70歳で孫がいるんですよね。そうすると、2世とタイアップして、3世、4世を育成していかなきゃならねえ。引き継いでいかなきゃならない。我々の組織としても大事なことだし、全国的に見ればそういう時代に入ってきてんです。ところが、残念ながら、世論はそういうふうになってるかっていうと、私はなってないと思います。昭和50年後半くらいから、文部省行って「学校教育の中で」って言いました。なかなかなんなかったですよね。 近年になって、もう言って、言って、言って、言って、教科書にも載るようになったですよね。それじゃ、それをしっかり勉強してるのか。必ずしもそうでないようです。教育関係者もこちらへ勉強に来るんですよね。ことしも来ました。教科書活用ってのは、中学3年生くらいになったらやってないようなんですね。なぜやってないか。試験問題に出ねえんですよ、入試問題に。やはりその勉強しなければなんない、っていう環境をつくるっていうことも大事なんですよ。私は行くとこ、行くとこで必ず言うことなんですけども、高校、大学入試、それから、官公庁なんかは特に率先して就職試験に必ず、北方領土問題を出す、と。そうすると、学校で教えるとか教えないとかじゃない。一生懸命勉強することになるんです。 近年、私も学校なんか行くことがあって、一生懸命勉強しているところもあるんですけども、そういう環境をつくるっていうことは大事。北海道は、今の高橋知事が初当選したときに、我々と懇談したんです。私、知事に直接申し上げました。北海道からでも率先して、高校入試とかに出してほしいと。そしたら、すぐやってくれました。今もね。だから、これは全国的にやるべきだなと思って。