グレーマーケットで急拡大、暗号資産のオンラインカジノ
数十年先まで持続できる企業に成長しつつある
リスクに寛容な若い顧客を求めて、クレイブンは新しい売り込み方を見つけた。コンテンツクリエイターに月100万ドル以上を支払い、ライブストリーミング・プラットフォームのTwitch(トゥイッチ)でギャンブルをさせたのだ。賭け金は、ステークから提供されているようだった。パンデミックによる都市封鎖でTwitchの視聴者数が2倍以上になると、ステークも「爆発的に売り上げが伸びた」とクレイブンは言う。22年には、ラップ界のスーパースターで高額スポーツベッターのドレイクと、1億ドルともいわれる大規模な提携を実現。ステークは表舞台でも認知されるようになった。 20年から22年に、ステークのギャンブルによる収益は約1億ドルから20億ドル以上に増加、暗号カジノ市場で圧倒的なシェアを獲得した。現在も自己資金で、クレイブンとテへラーニが50%の共同出資で経営する同社は、数億ドルの利益を上げた。テへラーニは、デビッド・ロックフェラーが所有していたマンハッタンのタウンハウスを4700万ドルで購入。クレイブンはメルボルンの高級住宅街トゥーラックに2軒の家を計7600万ドルで購入している。 ふたりは人々の注目を集め続けるため、マーケティングに惜しみなく資金を投入してきた。イングランド・プレミアリーグのユニフォームのスポンサー契約に年間1200万ドル、F1のネーミングライツ・スポンサー契約に3年間で1億ドルを支払っている。 最近、彼らの関心は自分たちが築き上げたものを守ることに向いている。今、オンラインギャンブルに関する法律を制定、あるいは検討する国がキュラソーを含め世界中で増えている。縮小するグレーマーケットで運営を続けるか、できるだけ多くの国の規制を遵守するかという選択を迫られているのだ。 結果、ステークは法務とコンプライアンスの担当者を大量採用し、顧客認証プロセスを強化している。英国、ポルトガル、イタリア、コロンビアで規制に従った非暗号資産事業を開業。米国では、通貨価値のないデジタルコインで楽しめる「ソーシャルカジノ」を運営している。 この戦略は間違いなく収益性を低下させるだろう。しかし、テへラーニは「ステークは数十年先まで持続できる企業に成長しつつある」と語っている。 ステーク◎エド・クレイブンとビジャン・テへラーニが2017年に始めた暗号資産のオンラインカジノ。カリブ海のオランダ領キュラソーでカジノライセンスを取得し、タックスヘイブンを享受し、低コストでスタート。コンテンツクリエイターを動員し、ライブストリーミングを通じて若い層への浸透を積極的にはかり、急成長した。
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