三越伊勢丹と連携「アバターの服作る」授業の効果 未来のファッションをテーマに創造力を育てる
グループワークにポジティブに向き合う子どもたち
2024年2月のとある日。三鷹市立第三小学校4年生の「未来の暮らしを考えよう」プロジェクトにおいて、自分たちが考えた未来のファッションについての最終プレゼンテーション大会が行われた。 三鷹市立第三小学校では、「循環」を基本の概念に、2023年10月から総合的な学習の時間に加え、国語の単元「山場のある物語を書こう」、図工の単元「ひみつのすみか」の授業も活用し、教科横断的に学びを進めてきた。 児童は1組につき4人から6人のグループに分かれ、3つの未来シナリオのうち1つを選び、「1.未来の暮らしについて考える」「2.未来の暮らしの物語をつくる」「3.同じテーマの人で街をつくる」「4.未来のファッションのデザインを作り、自分たちの考えを皆の前で発表する」という流れだ。 「雨のやまない世界では、気持ちがどんよりしてしまいがち。街には雨水を利用したウォータースライダーやプールがあり、気持ちを明るくするために、花火大会も行われています。そんな世界で着るのは、スカートの内側からお花の種が出てきてペンダントから光を集め、花を咲かせてくれる『雨でもルンルンお花服』です」 「空中で暮らす世界では、障害物がなく国境もありません。私たちが考えたのは、世界中を旅することができる『自由に空を舞うファッション』。スカートは花びらと羽でできていて、太陽の光を貯め、夜になると輝きます」 いささか緊張の表情も見られたが、未来の暮らしのストーリーや自分たちでつくった街、未来のファッションについて、ときおり身振り手振りをまじえながら堂々と発表する姿が印象的だった。審査は仲田氏をはじめとする三越伊勢丹スタッフが行い、入賞2チームを選定した。 「日々の生活と密着しながらも未来志向の題材に、子どもたちは毎回目を輝かせて取り組んでいました。先生方から『よい点も改善点も、とにかく子どもたちにフィードバックしてあげてください』と言われ、意識して行ったところ、ほめるととても喜んでくれるのはもちろん、課題点を指摘すると真剣に聞き、結果的に作品の解像度があがるんですよね。 グループワークを経て皆の前でプレゼンを行うには、周りの子の意見を尊重しながら落としどころを決めていく難しさがありますが、ポジティブに向き合う子が多かったです」 仲田氏は続ける。 「最初の頃、『僕が思っていることにみんながついてきてくれない』と悩んでいた子が、発表会の日は堂々とふるまい、同じクラスの子の発表を一生懸命応援している姿を見て感銘を受けました。環境問題や社会問題を座学で学ぶことももちろん大切ですが、絵を描いたり、工作したり、話し合ったりなど行動することで学びやコミュニケーション能力が深まりますし、『絵がうまい』『想像力がある』など、その子の新たな『好き』『得意』を発見するお手伝いができたようにも感じます」 ちなみに、軽井沢⾵越学園では、1年生から9年生までの児童生徒25人が参加。約3カ月かけて5回のワークショップに取り組み、子どもたちのグループ・個人のプロジェクトをそれぞれ発表する「アウトプットデー」で発表会を行った。 ⾹川⼤学教育学部附属⾼松⼩学校では、家庭科の授業の一環として5年生の児童35名が参加。これまで学んできたことを生かしながら未来のファッションについて考え、公開授業のタイミングで発表会を行ったという。 参加校の教員からは、「このプロジェクトの期間中、子どもたちの口癖は『先生、FUTURE FASHION考えよ!』でした。子どもたちとFUTURE FASHIONの世界にどっぷり浸ることができました」「環境と衣服の関係について家庭科でじっくりと学びたいと考え取り組みましたが、家庭科の枠を超えクラスみんなで本気になれました」「年に何回かしか見られない、想定を超えた子どもたちの本気の姿を間近で見せていただきました」「発表会当日の熱量は、子どもの思いがあふれていて、運動会のときのようなパワーを感じました」などの声が寄せられたという。