【老後破産】老人ホームの入居金、東京都は平均約500万円、では一番安いエリアは?
入居一時金数億、富裕層のみが入居できる“終の棲家”が、今話題の「超高級老人ホーム」だ。ノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ 超高級老人ホーム』では、至れり尽くせりの生活を享受するセレブな高齢者たちの実像に迫っている。“老後の沙汰も金次第”なのは一般層も同じだ。本稿では、40年近くにわたり高齢者向け介護事業のコンサルタントをつとめる、株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役の田村明孝氏に話を伺った。(取材:甚野博則、構成:ダイヤモンド社書籍編集局) ● 入居一時金は“減少傾向”だが ――拙著『ルポ 超高級老人ホーム』では、入居一時金が3億円を超える高級老人ホームを取材しました。結局、老人ホームに入るには一体どれくらいの費用がかかるのでしょうか。都市部と地方でも違うと思いますが、具体的な目安はありますか? 田村明孝(以下、田村):費用は、要介護状態で入るのか、自立して入るのか、またどのようなタイプのホームを選ぶかで大きく異なります。たとえば、要介護状態で入る場合、2023年のデータでは首都圏の平均入居一時金が225万円、東京都では501万円です。一方、東海地方では20万円と非常に安い。関西では100万円です。 以前は東京でも入居一時金が2000万円を超えることもありましたが、最近は減少傾向にあります。一時金を取らず、代わりに月額費用に置き換える動きが進んでいるからです。 ――地域によっても、かなり違いますね。 田村:はい。月額費用も地域によって大きく異なります。東京では平均22.7万円、青森では8.7万円、最も安い宮崎では8.4万円です。これには食事や共益費なども含まれています。一時金を払った場合の月額費用で計算されていますが、一時金を払わない場合、月額はその分高くなることがあります。 ――一時金を月額に置き換える流れはいつ頃から始まったのでしょうか? 田村:東京都が主導して進めてきた流れです。東京都では、入居一時金の償却の妥当性を厳しく求めています。また、一時金を取る施設は「適格要件外」とされ、入居者の選択肢から外れやすくなるような評価がつけられます。しかし実際には、一時金を払った方が安心だと感じる入居者や家族も一定数います。一時金を払うと月額費用が抑えられ、長生きした場合に経済的な負担が軽減されるからです。 ● 首都圏では4割が“3000万円以上” ――なるほど。では、自立者向けの場合の費用感はどうでしょうか? 田村:自立者向けの場合、一時金はさらに高額になります。首都圏では3000万円以上が4割を占める状況です。要介護者向けよりも高額なのは、生活期間が長くなる分、償却期間も長いためです。一般的には15年から16年で償却する設定になっています。一方、要介護者向けは平均5年程度です。 ――そうなると、費用を抑えたい人は、要介護状態になってから入居する方が現実的でしょうか? 田村:そう考える人も多いと思います。早めに自立状態で入居し、長く住むことでメリットを得る場合もありますが、可能な限り自宅で生活を続けて、要介護状態になってから入居するという選択も合理的です。 ――サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の場合はどうですか? 田村:サ高住は費用がさらに安く抑えられます。入居時の費用は敷金程度で、東京で月額21.8万円、宮崎では7.8万円ほどです。一時金を取らない形なので、初期費用が少ないのが特徴です。 介護付き有料老人ホームの平均居室面積は18~20平米程度です。一方、サ高住は18平米が多いですが、基準では25平米以上が目標とされています。また、自立者向けは30~35平米と広めです。 国交省では1人暮らしの最低居室面積を25平米と定めていますが、有料老人ホームは「施設」とみなされるため適用外です。しかし、暮らしの場として最低25平米を確保することが理想だと思います。 田村明孝(たむら・あきたか) 株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役。「高齢者住宅支援事業者協議会」事務局長。1974年に大学卒業後、ケア付き高齢者マンション開発会社に入社。神奈川県横浜市などにケア付き高齢者マンションの開設を手掛ける。1987年に株式会社タムラ企画(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立、代表取締役に就任。高齢者住宅の事業計画立案及び実施・運営・入居者募集等、一連の実務に精通したコンサルタントとして活躍。市町村の介護保険事業計画などの福祉計画策定をはじめ、老人福祉施設や有料老人ホームの開設コンサルや経営改善コンサルに力を入れ実践している。テレビ、新聞、雑誌など各種メディアへの出演実績多数。
田村明孝