円は対ドル153円台半ば、日銀総裁会見で利上げ探る-実需はドル買い
(ブルームバーグ): 31日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=153円台半ばで推移。金融機関が外為取引の基準レートとする公示仲値にかけて、実需のドル買いが円の重しになっている。市場参加者の多くは日本銀行の追加利上げ時期を巡り、植田和男総裁の定例会見での発言内容を見極めたいとの姿勢が強い。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、ドル・円相場は仲値がドル不足の影響もあるが、基本的に底堅いと指摘。植田総裁の会見について「追加利上げの時間軸をなんとなく示さなければ円安が進んでしまう」と述べた。
この日の日銀金融政策決定会合は、政策の据え置きが見込まれている。ブルームバーグが17-22日にエコノミスト53人を対象に行った調査では、追加利上げの時期について53%が12月、32%が来年1月を予想。衆議院選挙の結果を受けた政局不透明感から後ずれを見込むエコノミストもいる。最新の経済・物価情勢の展望(展望リポート)と植田総裁の発言から利上げ時期の手掛かりが得られるかが焦点だ。
りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、きょうの植田総裁の会見は「円安が進まないよう慎重に発言することが予想され、年内利上げなしとの思惑につながりかねない『時間的な余裕はある」との文言は避けるのではないか」と予想する。
午前の円相場は、月末に伴う輸入企業の売りなどを背景に、朝方の153円16銭から一時153円58銭まで下落した。取引一巡後は日銀イベント前で積極的な取引が控えられている。午後の植田総裁の会見が焦点となるものの、週末の米国の雇用統計や来週の米大統領選挙など重要イベントが続く。SBILMの上田氏は「10月の米雇用統計は弱い数字が予想されているが、ADP民間雇用者数は予想外に強く、警戒される」と言う。
10月の円は対ドルで既に6%超下落し、月間パフォーマンスは2016年以来の最低になる可能性がある。りそなHDの井口氏は「植田総裁の発言によっては154円程度まで円安に振れるリスクはあるが、155円を超えると介入警戒感も強まる」とみている。