大島紬の担い手確保へ 奄美大島龍郷町の織元で就業体験
本場大島紬の後継者育成を目的とした鹿児島県主催の就業体験(インターンシップ)が7日、奄美大島の龍郷町にある本場奄美大島紬織元「前田紬工芸」であった。県外から学生や社会人5人が参加。3代目で伝統工芸士の前田圭祐専務(37)から大島紬の歴史や制作工程などを学び、職業への理解を深めた。 県が展開する「かごしまの伝統的工芸品後継者育成プロジェクト」の一環。本場大島紬など県内の国指定伝統的工芸品を対象に2023年度から実施し、奄美大島での開催は初めて。全国各地で伝統工芸の就業体験を支援する「ニッポン手仕事図鑑」(東京都)に事業委託している。 参加者は書類や面談を通じて選抜され、交通費や宿泊費の補助を受け2泊3日の日程で来島。期間中、役場職員や先輩移住者との懇親もある。 5人は7日、工場見学などの後、図案の選定や仕分けの作業を体験。前田さんに近年好まれている柄の傾向や図案士の仕事内容などを熱心に質問していた。 前田さんは「大島紬を仕事として真剣に取り組みたいという参加者が集まり感謝。期待が大きい。住宅など生活の不安もなくしていきたい」と話した。職人不足を背景に複数の工程を担う人材を社員として採用予定。数年は給与を支払いながら、本場奄美大島紬産地再生協議会が実施する研修に通わせる予定という。 高校の修学旅行で奄美大島を訪れ、大島紬の職人を志したという専門学生の小口恵泉さん(20)=東京都=は絣(かすり)をつくる「締め機」の工程に興味があるといい「(染色や織る前の工程で)間違えることができない緊張感があり、誇りを持てると思う。将来は全部の工程を学び、自分のオリジナルのデザインで大島紬を制作できる職人になりたい」と語った。 県販路拡大・輸出促進課の牧元禎治課長(59)は「大島紬の担い手が減少する中、事業者に寄り添い後継者の確保や育成を後押ししたい」と話した。 奄美大島では11月にも同様の就業体験が行われる予定。