エンジンの確かな進歩を感じたヤマハのクアルタラロ。しかし一発の速さ改善が依然として課題に「メカニカルグリップは2019年から足りていない」
ヤマハはセパン・インターナショナル・サーキットで実施されたMotoGPのシェイクダウンテスト、プレシーズンテストを通してアップグレード版のYZR-M1を投入。未勝利に終わった昨シーズンから前進するため、様々なものを試している。 【ギャラリー】MotoGP、セパンテストでF1インスパイアな空力マシン続々登場 ファビオ・クアルタラロと新加入のアレックス・リンスは共に、2024年バージョンのM1をセパンで走らせたが、マシンの変更点に関する感想は複雑なものであった。 クアルタラロは、ヤマハがエンジンの馬力という点でようやく目に見える進歩を遂げたとコメント。パワーデリバリーは依然として「アグレッシブすぎる」としながらも、馬力アップがそのままトップスピード向上に繋がっていると手応えを口にしていた。 その一方で、クアルタラロはマシンのメカニカルグリップが未だ足りていないと主張する。この傾向は、彼がサテライトチームのペトロナス・ヤマハSRTからMotoGPにデビューした2019年から変わっていないという。 「トップスピードはかなり良くなったし、エンジンも良くなった。これは一歩前進だ」とクアルタラロは言う。 「ただそれを活かしていくという部分がまだ難しい。バイクはまだトルクがかなりアグレッシブなんだ」 「空力やエンジンが良くなったというのは確かだ。でも僕たちはそれをどう機能させるか、そして2019年から足りていないメカニカルグリップをどうやって確保するかを理解する時間が必要だ」 またメカニカルグリップ以外にも、エンジンのパワーをスムーズに供給するための電子制御の改良が必要だとクアルタラロは補足した。 「(メカニカルグリップとパワーデリバリー)そのどちらも問題になっているんだ。問題というか、僕たちはトップ6に入るための解決策を見つけないといけない。トップ6に入れなくても、4番手から8番手(を争える)くらいのね。これが僕たちが今見つけないといけないものだ」 「それは僕たちにとって本当に重要なものだと思う。というのも、僕たちは昨年同様にペースは良いんだ。トップ3とまでは言わないけど、そこに食い込む余地は全然あるよ」 「でも11番手や12番手からのスタートになると、どんなにペースが良くてもその辺りにとどまることになってしまう。だから僕たちはグリップをかせぐ方法を見つけないといけないんだ」 セパンでのテストはシェイクダウンも含めて計5日間開催されて路面にラバーがのったことや、天候に恵まれたこともあり、ラップレコードを上回るなど1分56秒台のタイムが複数叩き出された。その中でクアルタラロのベストタイムは1分57秒525で、トップのフランチェスコ・バニャイヤから0.843秒差の11番手でテストを終えた。 クアルタラロはこのテストの中でバイクの限界に達したと感じている。一発の速さが長らくヤマハの弱点ということを考えると、これは良くない兆候だと言える。 「(1分)57秒5を出した時は嬉しかったけど、それが限界だった」とクアルタラロ。 「簡単に限界までいってしまうんだ。だって僕は4周走って、57秒5、57秒6、57秒5、57秒6だったんだ」 「1周だけ、他の周よりも圧倒的に速く走れるということはないし、これはちょっと理解し難いところだ。改善しないといけないところは分かっているけど、どうやってやるのかが問題だ」
Rachit Thukral