ビットコインマイニングの禁止は逆効果になる場合もある:最新の研究で判明
環境保護を理由にビットコイン(BTC)のマイニングを禁止しようとしている政府は、よく考えるべきだ。逆効果になる可能性がある。 これは、10月31日に発表された非営利の技術研究企業Exponential Scienceによる新しい学術論文の結論だ。論文のタイトルは『The Unintended Carbon Consequences of Bitcoin Mining Bans: A Paradox in Environmental Policy(ビットコインのマイニング禁止がもたらす予期せぬ炭素排出の影響:環境政策におけるパラドックス)』。 論文の結論は、地域によってはビットコインマイニングの全面禁止は、影響を受けるマイナー(採掘業者)が化石燃料に依存する電力網のある新しい地域に移転する可能性があるため、業界全体の二酸化炭素排出量の増加を招く可能性があるとしている。 「ビットコインマイニングは、環境への影響という観点では、PRの観点から見ると、ここ数年は厳しい状況にあった」と、論文の執筆者の一人であるフアン・イグナシオ・イバニェス(Juan Ignacio Ibañez)氏はCoinDeskに語った。 「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)によるマイニングがエネルギー集約的な活動であることは事実だが、それが直接的に二酸化炭素排出や環境への悪影響につながるわけではない」。 実際、エネルギー源が何であるかによってすべてが決まる。石炭による電力網は、水力による電力網よりも明らかに多くの二酸化炭素を排出する。そして、マイニング禁止は「業界をグリーンなエネルギー源から遠ざけ、ネットワークからの世界的な排出量を増加させるという不運な結果をもたらす可能性がある」とイバニェス氏は話している。 それは地域によって異なる。研究チームのモデルによると、例えば、カザフスタンでマイニング禁止措置が取られた場合、ビットコインネットワークの年間炭素排出量は世界全体で7.63%削減されることになる。しかし、同じ措置をパラグアイで実施した場合、排出量は4.32%増加するという。 全体的に見ると、環境保護の観点から、中国、ロシア、マレーシアなどの国々ではマイニング禁止がより効果的であり、その中ではカザフスタンがリードしている。しかし、南北アメリカ大陸のほとんどの地域とヨーロッパでは、特に北欧諸国とカナダに中心に、マイニング禁止は逆効果となるだろう。 しかし、同じ国の中でも地域によって状況は異なる可能性がある。例えば、アメリカでは、ケンタッキー州やジョージア州でのマイニング禁止は排出量削減にプラスの影響をもたらす可能性が高いが、ニューヨーク州、テキサス州、ワシントン州、カリフォルニア州での禁止は有害となるだろう。 興味深いことに、中国でも同様のことが起きている。中国政府は2021年に暗号資産マイニングを禁止したことで知られているが、マイニングモデルによると、一部の中国のマイナーは移転する代わりに単に地下に潜り、違法に操業を続けているとされている。 その結果、新疆ウイグル自治区でのマイニング活動がすべて停止した場合には世界の年間排出量は6.9%削減できる可能性がある一方で、四川省で同様の動きがあった場合、排出量は3.8%近く増加する。 「このことが強調しているのは、科学に基づく規制の重要性だ」とExponential Scienceの共同創設者であるニヒル・ヴァドガマ(Nikhil Vadgama)氏はCoinDeskに語った。「ブロックチェーンのような新興技術は複雑なシステムであり、そのため、規制介入はバタフライ効果を生み出す可能性がある」。つまり、政策決定が意図せぬ結果を広範囲にもたらす可能性があるということだ。 イバニェス氏にとって、この研究から得られた教訓のひとつは、ビットコインのマイニング事業がますますオンライン化されるにつれ、特定の国あるいは地域がネットワーク全体の炭素排出量に過大な影響を及ぼすようになるということだ。 「現在のところ、我々のモデルではスウェーデンに大きな影響は出ていないが、好条件が続けば、マイニング事業者がさらに移転する可能性は高いだろう。アイスランドやアルゼンチンなども、まもなくレーダーに映るようになるかもしれない」とイバニェス氏は述べている。 |翻訳:CoinDesk JAPAN|編集:井上俊彦|画像:Shutterstock|原文:Bitcoin Mining Bans Can Backfire on Climate Conscious Governments, a New Research Finds
CoinDesk Japan 編集部