スパイ用マニュアルに学ぶ「内部崩壊の方法」

サボタージュマニュアルをご存知ですか？ CIAの前身組織OSS（戦略諜報局）が第二次世界大戦中に作成したとされる、組織の生産性を低下させて内部崩壊させるためのスパイ用マニュアルです。2012年頃にCIAにより一般公開され、2015年の書籍化によって大勢の目に触れることになりました。 11項目あるのですが、その5項目に「何事も指揮命令系統を厳守し、意思決定を早める『抜け道』を決して許すな」とあります。 日本企業で働いているとここに書かれている事に対して、「何が間違っているのだ」と思う人もいるかもしれません。 日本企業では、意思決定が何層もの階層に分かれていることも多く、上司がどう思うかを考える（配慮、忖度する）管理職も少なくありません。その結果、「全ての決裁者のコンセンサス」を必要としてしまい、意思決定を早められず、生産性を下げてしまうのです。 ではどうすればよいのか。それは「決め方を決めておく」ことです。 具体的には、時間（期限）を決めて、最終的には会議の主催者（議長）が決めるというルールにすればよいのです。 そのために、会議ごとに議長が誰かを決めておきます。誤解されていますが、議長は会議の進行をし、全員の意見を集めればよいだけの仕事ではないのです。AかBか、決めるのが難しい判断をするのが仕事なのです。 議長とは、議論が紛糾したからといって、次回まで持ち越すのではなく、限られた情報で決められるように訓練しなければいけない重要な仕事なのです。 私は、物事の決め方の中で、多数決が最悪の決定方法だと思っています。もちろん会社法上、株主総会決議事項に限って言えば、議決権が多い方（つまり多数決）に従うしかありません。 しかし、それ以外の議案であれば、多数決で負けた方は、プライドは傷つき、不本意なことをしなければいけないわけです。これではうまくいくこともうまくいきません。 だから「民主主義の決め方は多数決が最適だ」というのは間違った認識です。対話をきちんとして、議長が決めるのが極めて合理的であり民主的なのです。