メルセデス・ベンツの筆頭株主であり、ボルボを傘下にもつ中国の風雲児、吉利汽車(ジーリー)に筑波サーキットで対面!
筑波サーキット試乗レポート
さて、試乗したのは、セダンの「星端L智擎」だ(試乗レポートは鈴木慎一)。 簡単にスペックを見てみよう。 星端L智擎 ボディサイズ 全長×全幅×全高:4825mm×1880mm×1469mm, ホイールベース:2800mmだ。 車両車重:1625kg 搭載エンジン:1.5L直4ターボ 最高出力:120kW(163ps) 最大トルク:255Nm。 モーター;永久磁石同期モーター 最高出力:100kW(136ps) 最大トルク:320Nm 3速ハイブリッドトランスアクスルを組み合わせる 駆動方式:FWD WTLCモード燃費:23.7km/L サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式、リヤがマルチリンク式だ。電動パワーステアリングはダブルピニオンアシスト式。 中国での価格は、最上級グレードの天宮版で14万6700元(1人民元=21.6円換算で約317万円)だ。 エンジンの熱効率は44.26%だというから、現代世界最高峰である(ちなみに、エンジンブロックには「Lynk&Co」の文字が刻印されていた。 ちなみに、ジーリーがライバルとして持ち込んだ(どうやらレンタカーだったようだが)トヨタ・カムリは2.5L+トヨタハイブリッドシステム(THS)でWLTCモード燃費は24.3km/L。フロントモーターの出力は120ps/202Nmだ(車重はFWDモデルで1580kg)。 こうして見てみると、ジーリーの星端L智擎のスペックは、トップレベルだ。 実車を見ても、デザイン、外観から見た仕上がりは非常に素晴らしい。このサイズでこんな美しいデザインのセダンがあったら、心が動く人も多いのではないだろうか。 プラットフォームはボルボ(前述した通りボルボはジーリー傘下だ)でお馴染みのCMA(Compact Modular Architecture)を使う。つまりボルボXC40とプラットフォームは同じだ。 今回の試乗会(の体をなしていなかったが)では、SUVの「星越L智擎」が1周の同乗走行、セダンの「星端L智擎」は1周だけドライブできた。したがって、報告できるのは第一印象のみであることをお断りしておく。 SUVの「星越L智擎」の助手席で結構なハイペースな走行を体験した。ドライバーは中国人だった(テストドライバーなのかレーシングドライバーなのか、はたまた中国人ジャーナリストなのか、わからなかった)。どんなドライバーなのかわからないまま、サーキットで同乗走行するのは、恐怖以外のなにものでもない。 ドライバーが、「Hello Geely」と呼びかけると、Hello メルセデス!と同様な体験ができる。バッテリーの残量はどのくらいか、ドライバーが聞くとシステムが答えてくれていた。目前には、今風の大型ディスプレイがそびえていたが、モニターの品質は最上級とは言えなかった。なんとなくくすんで見えたのだ。 あっという間の1周だったが、印象は悪くなかった。が、ストロングハイブリッドらしさは感じられなかった。1.5L直4ターボがやや大きなボディを引っ張っている感じ。脚周りはしなやかだが、動きはやや重く感じられた。 今度はドライバーズシートに収まって実際にドライブしてみた。セダンの「星端L智擎」である。 スラロームや、停止~フル加速~急制動などを試したが、確かに破綻はしないし、走りはスムーズだった。しかし、パワートレーンの出力に対してボディが少し重いように感じられた。また、セダンもSUVと同様に「フルハイブリッドならではのモーター駆動の気持ち良さ」はあまり感じられなかった。 2台の吉利汽車(ジーリー)の最新モデルを日本で試乗できたのは、貴重な体験だった。 試乗後、中国メディアのインタビュー(というか、ビデオカメラを向けられた)で、そのときのやりとりだ。Qが中国メディア、Aが筆者である。 Q:ジーリーのクルマ、日本に導入したら売れると思いますか? A:売れるとは思いません。ハイブリッドモデルについては、日本に優れたクルマがたくさんあります。ブランドの認知度が低いジーリーが日本で成功するのは難しいと思います。ただし、ハイブリッドではなく、BEVなら可能性があるのではないでしょうか。ジーリー(Geely)ブランドではなく、Zeekr(ジーカー)やLynk & Co(リンクアンドコー)の方が成功する確率が高いと私は思います。 だったのが、翌日中国のSNSで公開されていたコメントは 「今日は筑波コースでいくつかの日本の専門メディアにインタビューした。吉利の2つのモデルは非常に高い評価を得て、操作感、動力感、インテリアデザインはすべて良いです。特に贅沢感は十分だ。しかもハイブリッドシステムは日本系よりも直接的なパワー感があり、すでに日本に参入した中国ブランドより高級感がある。価格が適切であれば、市場があるかもしれません」 話していないことを記事にされるのは心外だ。吉利汽車に限らず、中国メーカーで日本参入を計画しているところは複数あるようだ。だが、まずは「認知してもらうこと」「相互理解」からスタートする必要があるだろう。