「和而不同(わじふどう)」でイノベーションを起こす…北欧フィンランド「SLUSH」は何がすごい?【ビジネス四字熟語】
環境先進国にやってきた最先端の技術
会場には様々な展示ブースも並んでいます。 世界的な趨勢を反映するようにAIに関するセッションやブースが目立つ一方、環境先進国のフィンランドらしく電気自動車(EV)関連の技術も多数展示されていました。 スウェーデンのボルボが展開する高級ブランド「ポールスター」は、新モデル「ポールスター4」を出展。洗練されたデザインの最新EVに、多くの来場者が広さや乗り心地を体験していました。 目を引いたのは、ラトビアのスタートアップが開発した世界初の「電動シングルトラックオフロードバイク」です。 このEVバイクは、緩い砂地や、ぬかるんだ森林、岩場の登り坂、さらには雪の中でも走行可能だといいます。 フィンランド人に話を聞くと、冬場に厳しい環境となるフィンランドで問題なく走行できれば、世界中どんな場所でも通用するだろうとのこと。EV技術を実証するには、フィンランドは最適な環境なのだといいます。 厳しい環境というピンチをチャンスとして生かす。単に技術を取り入れるだけでなく、独自の進化を遂げ、世界標準となることを目指す意志が、SLUSH全体から感じられました。
若い力で「システミック・イノベーション」を起こす
グローバルなネットワーキングや先端技術など様々な見どころがあるSLUSHですが、一番の特徴とも言えるのが運営体制です。 これほどの大規模イベントにでありながら、経営陣は20代の若手が中心。そして、大学生が中心となった約1600人ものボランティアが運営を支えています。 フィンランドの大学生たちの多くは「自分たちの手で世界を変えることができる」と信じていて、学生起業に挑戦する人も少なくありません。 フィンランドでトップクラスのテクノロジー、ビジネス、アート、デザインの大学として知られるアールト大学を訪れる機会がありましたが、そこで耳にしたのは「システミック・イノベーション」という言葉です。 「システミック・イノベーション」とは、これまでのシステムを変え、社会全体に影響を及ぼすような変革のこと。目先の利益や小さな変化ではなく、大きなビジョンを持って行動しているかどうかを、学生同士がいつも会話の中で確認し合っているといいます。 和而不同。人と協力はしてもむやみに同調しないことを意味するこの言葉には、『論語』で続きがあります。 「君子和而不同、小人同而不和」 君子は主体性を持ってむやみに同調しないが、小人はやたらと妥協するものの本当の協調性には欠ける。 いかに自分の信念をもって取り組むか。それが未来を切り拓くカギであるとSLUSHの会場やフィンランドの大学生たちが力強く語りかけているようでした。 (フジテレビ経済部 清水俊宏)
清水俊宏
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