話題の哲学者に聞く、難解な哲学書を読みこなすコツ
貧困、奨学金、親子関係、病気、気質、自己責任論など様々な原因で生きづらさを抱える人も多い現在。人生の問題を解決するヒントとして「哲学」が注目されている。 哲学を学ぶ意義や効用について話す哲学者・戸谷洋志さん そこで 『親ガチャの哲学』(新潮新書)『恋愛の哲学』(晶文社)など哲学に関する著書を多数出版している哲学者・戸谷洋志さんに、なぜいま哲学が求められているのか、そして哲学を学ぶ効用ついて伺った。 今回はその中から、なぜ哲学は難解なのか、加えて「挫折」せずに哲学を学ぶコツを紹介する。(全2回の2回目) ■ 哲学書が難しいのは“当たり前”を問い直しているから みなさんは“哲学”に対して、どんなイメージを持っていますか? なかには「哲学に興味はあるけれど、哲学書を読むのは難しそう」や「何冊か哲学書を読んでみたけど、なにを言っているのかわからず挫折した」という印象を持っている人もいるのではないでしょうか。 これは至極真っ当な意見だと思います。 確かに、他の学問に比べて哲学には、理解しづらい部分、難解な言葉が多いです。 ではなぜ哲学が難解な表現や言葉を用いるのか? それは哲学が“当たり前を問いなおす学問”だからです。 本の表紙を見れば、本の裏側があることを無意識のうちに信じています。 でも、もしかしたら表紙の反対側には“虚無”が広がっているかもしれない。夜空にのぼる月だって、私たちが見ている側面の反対側が存在するかは、実際に行ってみないとわからないですよね。 なのに、私たちは見えている物には、必ず反対側が存在すると信じている。表があるものには裏があって“当たり前”だと思い込んでいるので、疑う余地はないと決めてつけているんです。 しかし哲学はそういった“当たり前”を問いなおします。そのとき私たちが普段使っている語彙だけでは表現が難しい。そこで哲学書は日常で使う言葉とは違う語彙や表現を使っています。 なので、哲学書の言っていることが理解できないからと諦めるのではなく、哲学書の内容がわかりづらいのは、私たちの“当たり前”を問いなおしているからだと、十分に理解する必要があるんです。 逆に言えば、難しい言葉で説明をしないと伝わらないくらい、哲学の世界で議論されている問題は、私たちの日常生活に根ざしているとも言えます。