リコージャパンのデジタルサービス戦略、業務改革やAI、GXなどに注力へ
その一方で、グリーントランスフォーメーション(GX)などを担当するパブリックサービス事業の取り組みについても説明した。2023年4月に設置したパブリックサービス本部が担当しており、同本部傘下のスマートエネルギー事業部を2024年10月にGX事業部に改称。GXに丸ごと寄り添う体制を整えているという。 地域の脱炭素のロードマップ支援づくりにも貢献していくとする。これまでの39自治体に加えて、新たに18自治体への提案を開始し、地域の脱炭素の実装を15自治体で開始しているという。自治体や地方銀行、信用金庫と脱炭素や持続可能な開発目標(SDGs)、DXをテーマに連携協定の締結を進めており、公民連携を加速しているという。 執行役員 パブリックサービス本部長の花井厚氏は、「社内では『社会課題解決本部』とも呼んでいる。GXソリューションの提供や、中長期に伴走できる人材の拡充、成功と失敗を経た社内実践を紹介できる点が強み。GXソリューションモデルを全国48支社358営業所の顧客接点人材から展開することが可能だ。地域社会のウェルビーイングを公民連携のパートナーシップにより実現していく」と語った。 リコージャパンは、全国18カ所の事業所を「ZEB」(ゼブ/ネットゼロエネルギービル=室内環境とエネルギー消費ゼロの両立を目指したビル)化し、それらのノウハウを顧客に提供する。特に製造拠点の御殿場事業所は、1985年建設の建物を改修し「ZEB Ready」として展開。1次エネルギーの消費削減量や二酸化炭素(CO2)排出の削減量で50%以上を達成している。2024年度上期に111社996人が御殿場事業所を訪問し、36億円の新規案件創出につながったという。「これは2023年度の約2倍の実績。そのうちカーボンニュートラルや『RE100』を目的としたものが65%を占めた。GXに対するお客さまの関心が高まっている手応えがある」(花井氏)という。 リコージャパンは、「脱炭素STEP伴走サービス」を提供する。社内実践のノウハウの提供に加え、同社で供給している再生エネルギーの販売や蓄電池ソリューションを提供。診断サービスや脱炭素化に向けたロードマップの作成サービスなども提供している。 GX人材の育成にも注力する。環境省認定の「GXアドバイザー」が40人、「サステナブル経営/CSR検定」を302人が取得している。さらに、GXの実行に伴い必要とされる関連外部資格の取得も積極化。花井氏は、「顧客のGXに中長期で伴走できるプロ人材を育成したことで、脱炭素STEP伴走サービスの実施件数が大きく伸長し始めている。特に、CO2排出量の可視化、削減量の把握、ロードマップ作成といった案件が急増している」と話した。 GXの推進には、他社製品やサービスとの連携が重要である点も強調し、連携提案が可能な人材育成にも注力しているという。さらに、顧客の課題軸で提案する「シン・脱炭素コーディネーター」を拡充。これを、顧客の顕在的、潜在的な課題をつかむための知識や経験を有し、GXに伴走できる人材と位置付けている。 なお、同社は、2024年度上期に再生エネルギーの導入で、製造業顧客を中心に1万3742トンのCO2を削減。前年同期比53.1%だとという。「リコーグループは、GXを3本目の新たな収益の柱に位置付けたいと考えており、年平均成長率30%以上の成長を目指す」と花井氏。リコーグループは、2040年度にスコープ1/2において、実質排出ゼロ達成とRE100達成を目指しているほか、2050年度にはスコープ1/2/3において、温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロ達成を目標に掲げている。 花井氏は、「1970年代に環境推進室を設置し、2000年以降、環境経営を推進してきた。他社に先んじて新たな制度や仕組みを導入し、リコーグループは、環境経営のトップランナーと位置付けられており、世界で最も持続可能な企業100社に通算で12回選定されている。RE100の目標達成も10年前倒しにすることを発表している」などと説明した。