日本シリーズで王手をかけられた広島の逆襲は可能か
球史に残る激戦の続いている日本シリーズは、いよいよ今日3日から場所を広島のマツダスタジアムに移して最終局面を迎える。ソフトバンクは1敗1分けからホームで3連勝して王手をかけた。過去68回あるシリーズの歴史で先に王手をかけたチームが頂点に立ったのが57回。V確率84%のソフトバンクが絶対有利であることは間違いないが、広島の逆襲は可能なのだろうか。 ソフトバンクの野球に詳しい評論家の池田親興さんは、「勢いに乗るソフトバンクの有利に疑いはない。だが、マイナス要素も多い。場所がカープファン一色になるマツダスタジアムに変わることもあり、ここで仕切り直して、首の皮一枚を残した広島が逆襲する可能性は残っていると思う。ひとつ流れが変われば第8戦までいく可能性があるかも」という見方をしている。 池田さんが指摘するソフトバンクのマイナス要素は、デスパイネの故障と、内川聖一、松田宣浩の大不振にある。 「サヨナラ本塁打の柳田が、ようやくらしさを取り戻したのはソフトバンクのプラス材料。だが、その一方で、本来、右膝に古傷のあったデスパイネが、今度は左膝を痛めたことで守備につかせることは難しくなった。第2戦では守りのミスには目を瞑って攻撃的布陣を組んだが、スタメン起用は無理。使えるのは代打の1打席だけだ。第5戦で内川にバントを命じた工藤采配は見事だったが、裏を返せば、それだけ内川のバッティングが不調だということ。開幕戦の死球の影響があるのかもしれない。また松田も“逆シリーズ男”のトンネルに入りこんでしまっているのが痛い」 第2戦で工藤監督は、レフトにデスパイネを入れる攻撃的布陣を組んだが、故障の影響を考えるとDH制のなくなるマツダスタジアムでのスタメン起用は無理だろう。 加えて内川、松田のベテランの2人が絶不調。内川は開幕戦で左足に受けた死球の影響があるのか、打率.143。第5戦では「悪いけど」と、工藤監督から説明をうけて無死一、二塁でバントのサインがでた。そのチャンスを生かせなかったのが松田。内川よりもさらに深刻で打率.083。シリーズのヒットは1本しかない。元々、爆発か、沈黙かのムラのあるタイプで“逆シリーズ男”となる危険性のあるバッターだったが、沈黙が続いており今日3日のスタメン落ちは濃厚となっている。 短期決戦を熟知する工藤監督のことだから、もしかすれば、内川、松田の“2枚落ち”の新布陣を組むのかもしれないが、いずれにしろソフトバンクの攻撃力は、DH制のないマツダスタジアムに舞台を変えることで落ちる。 しかも広島の先発はジョンソン。第2戦では、7回を投げ7奪三振、4安打、1失点とソフトバンク打線を抑え込んだ。6月の交流戦に続いての好投で、カットとツーシームを39歳のベテラン捕手の石原慶幸が見事に内外に配球した。 また“甲斐キャノン”に封じこめられた機動力復活の可能性もある。ソフトバンクの先発予定のバンデンハークはクイックや牽制などの機動力封じの小技がソフトバンク投手陣の中では最も不得意なのだ。 甲斐拓也が強肩で、捕球後のスローイング動作がいくら速くても、盗塁阻止は、捕手と投手の共同作業であり、バンデンハークが、1.25秒以内のクイックができなければ、広島の機動力に勝機が生まれる。 第2戦では、鈴木誠也の盗塁をバンデンハークと甲斐のコンビで刺しているが、鈴木はシーズンで4個しか盗塁を決めていない選手。32盗塁の田中広輔が、どこかで揺さぶってくれば、阻止率10割の“甲斐キャノン神話”が崩れるかもしれない。 広島が、完全に封じこめられていた盗塁をひとつでも決めれば流れが変わる可能性がある。しかも、打率1割台でブレーキになっていた3番の丸佳浩が、第5戦では逆転2ランを放つなど、“シリーズスランプ”から脱出の兆しを見せている。