異国の地で一文無しにーー家族を捨てフィリピンで生きる男の「なれのはて」#ザ・ノンフィクション #ydocs
愛するテスさんの死
コロナ禍で取材は一時中断していたが、2023年8月、4年ぶりに平山さんを訪ねると、その傍らに、小さな遺影が飾られていた。つい3カ月前に内縁の妻テスさんが亡くなったのだという。 まだ53歳だった。 「元々、心臓に持病を抱えていたが、家族のお金を使うまいと、病院へ通わなかった」と平山さんは言った。 「テスを日本に連れて行くと約束した。でも約束を守れなかった」 そう話す平山さんは、73歳になっていた。 足も弱り、杖が無くては歩けない。愛する人を失い、自身の老いも止められない中、思うのは故郷のことだった。 平山さん自身の健康が心配になり、ディレクターは帰国を提案してみた。 しかし平山さんはオーバーステイ。出頭すれば強制帰国となり、再びフィリピンへ戻ってくることは極めて難しくなる。 13歳になった娘のマリコ、テスの前夫との娘プリンセスはどうなるのか。何よりテスの墓もフィリピンにある。 平山さんは、悩んだ結果、日本には帰らないと決めた。 車椅子を路地裏に止め、行き交う人を眺める平山さん。 人生の黄昏を迎えたその目には、寂しさと諦めと納得が入り混じった、複雑な色が映り込んでいるように見えた。
娘たちを見つめて
現在、平山さんはさらに足が弱って、外出することもままならなくなったという。 電話で近況を尋ねたディレクターに「監獄にいるみたい。自分はここに必要ない。いてはいけない人間だと感じている」と話した。 救いは、2人の娘の存在かもしれない。 プリンセスは、日系企業に就職したのち転職し、今はコールセンターで経理の仕事をしている。いつか起業するのが夢だという。 中学2年生になったマリコは、科学と英語が得意。将来は医療関係の仕事に就きたいそうだ。 平山さんの流浪も、私たちの取材もまだ終わってはいない。 ディレクターは、近いうちに再びフィリピンへ渡る予定だ。 (取材・記事/粂田剛)
(※この記事はフジテレビ「ザ・ノンフィクション」とYahoo!ニュース ドキュメンタリーの共同連携企画です。 #Yahooニュースドキュメンタリー #令和アーカイブス)
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