異才「ハイドロ」を奢られた小型車シトロエン「GSブレーク」に試乗! 実用ワゴンなのに極上のドライビングプレジャーでした【旧車ソムリエ】
個性的という言葉さえ陳腐に聞こえてしまうほどに……
この時代のシトロエンは、あらゆるモデルがじつに個性的、魅力的なスタイリングの持ち主といえよう。それは大衆向けに門戸を広げるべく開発されたGS、しかも実用本位のブレークとて例外ではなく、当時におけるコンセプトカーにも匹敵しそうなスタイリッシュな美しさに、まずは感心させられてしまう。 ドアを開いても、プラスチックとファブリックによる現代彫刻のようなインテリア。さっそくキャビンに乗り込むと、ボディ全体がいったん沈むのだが、ほどなく「スッ」と元の車高に戻る。ハイドロニューマティックの車高調節機構が、ちゃんと仕事をしているのだ。 シートはDSのごとき「人間をダメにするソファ」感はなく、意外としっかりとした表皮の張り。とはいえ、座ってみればやはりシトロエンのセオリーどおりにソフトで、しかもこのあとの疲れは最小限なものとなるのだが、それを実感したのは、すべての取材が終了したあとだった。 ところで、当初は排気量1015cc・56psでデビューしたGSの空冷水平対向4気筒SOHCエンジンは、1972年秋には1222cc・61psの「1220」も追加。さらに大改良型のGSAでは1129ccや1299ccのフラット4も搭載されたが、今回の試乗車両は1220モデル。その第一印象は、この時代の小型車としてはかなり静かでスムーズということだった。 ステアリングコラム下の、ちょっと探りにくい場所に刺したイグニッションキーを回しエンジンを始動する。左右のストロークが妙に長いシフトレバーを1速に入れて走り出すには、気遣いなどまったく不要。低速トルクが厚くて、とても乗りやすいからである。 低速域では「パルルッ」というフラット4独特の排気音よりも、「ヒューン」という空冷ファンノイズのほうが大きく聴こえてくるくらい。さらにスロットルを踏み込んで回転を上げても、むやみに排気音が高まるようなこともない。 また、わずか1220ccであるうえに、この時代のシトロエンの常として重いフライホイールが吹け上がりを緩やかにしているせいか、信号の多いわが国の道路におけるストップ&ゴーの加速も必然的に穏やかなものとなる。それでも3000rpmも回せばトルクは充分に乗ってくれるので、一般道の流れをリードするのは造作もないことである。
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