「首の痛みを甘く見ないで」千鳥ノブも経験、放置すると危険な首こり!合言葉は「FAST」
スマホの使いすぎや、合わない枕の使用などで起こる首のこり。「首の後ろの痛みは甘くみてはいけません。脳に関係する病気がひそんでいるケースも」と専門医。温めたりストレッチしたりしてもなかなか治らない場合は、要注意だ。 【写真】脳卒中を早期発見できる「FAST」とは
ひと晩寝て様子を見たりしては絶対にいけない
首のこり感が継続的に続き、頭痛や首の痛みにつながった、なんていう経験はないだろうか。そんなちょっとした首こりが、命にかかわる病気の前ぶれになることがある――。 2022年の夏、お笑いコンビ・千鳥のノブが、1か月以上の休養をとった 。理由は右椎骨動脈解離という病による入院のため。放置すれば脳梗塞やくも膜下出血をまねくおそれがある病で、異変に気づいたのは首の痛みがきっかけだったという。 「ノブさんを直接診ていないので一般論になりますが、MRIなど検査精度が格段にアップしたことでこの病気の早期発見が可能になりました。首の痛みをただの首こりと軽視しなかったことが、適切な治療につながったと思います」 そう語るのは脳卒中の専門医、瀧琢有先生。 「首には大事な動脈が4本あります。首の後ろ側の左右に椎骨動脈、前方の左右にある頸動脈です。これら血管の壁は三層構造をなしていて、いくつかの原因で裂けたり剥がれたりすることで、動脈解離が発症します。ノブさんは軽度のようなので治療は、血管の壁を修復するための投薬と安静にする程度で済んだはず」(瀧先生、以下同) 前述した血管の三層のうち内側の壁(内膜)が裂けて、剥がれた血の塊が脳の血管で詰まると脳梗塞に。内膜と真ん中の壁(中膜)のあいだに血が流れ込んで血管が膨み続けると、外側の壁(外膜)に穴が開いて出血。 その後、頭蓋骨の下にある、くも膜と軟膜のあいだに出血が広がるとくも膜下出血に。脳梗塞と前後して発症する場合もある。お笑いコンビ『爆笑問題』の田中裕二は2021年に両方発症した。 「椎骨動脈は首の骨(椎骨)のなかを通っています。その部分の血管はとても細く、首に過度な力やねじれが加わると解離を起こしやすい。若い人なら例えば重量挙げで力むなど、運動中に起こすことがあります。中高年の人は、動脈硬化で血管の壁がもろくなり発症するのがほとんど。 実は動脈解離の初期段階は、痛みもそれほど強くありません。でも、痛くないからといって首のこりと判断し過度なストレッチやマッサージで力を加えれば、動脈解離が密かに進行し、脳梗塞やくも膜下出血に至ります」 くも膜下出血になることもあるが、発症時には首こりとは違う激しい頭痛に襲われる、とよく聞くが……。 「“あ、いま始まった”とわかるほど強烈な頭痛です。その後、強弱はあっても頭位や体位をどう変えても、痛み自体が消えることはありません。その場合はすぐに救急車を呼ぶか専門病院へ。ひと晩寝て様子を見たりしては絶対にいけません」 行き先は脳神経内科か脳神経外科がベストだが、頭痛もちの人や首がこりがちの人はどの程度の痛みで行けばいいか迷いそうだ。 「今まで感じたことのない痛みや違和感があれば、迷わず受診を。後頭部から肩にかけての強い痛みや首こりは、心筋梗塞や気胸などの大病のサインとしても現れます」