アルピーヌA110 詳細データテスト 完成度の高いシャシー モアパワーがほしい もう少し安ければ
使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆
■インフォテインメント 7.0インチのタッチ画面式インフォテインメントシステムは、2022年にA110がマイナーチェンジした際に大幅なアップデートを果たした。USB-Cポートは2口あり、AppleもAndroidもスマートフォンのミラーリングはワイヤレス。本体のソフトウェアは、OTAアップデート対応となった。 ホーム画面のレイアウトはカスタマイズが効き、頻繁に使う機能へ素早くアクセスできる。トップには操作バーが常に表示され、スマートフォンの画面からも車載システムからも簡単に操作できる。そのため、コネクティッド機能の不足はほとんど感じない。 また、メイン画面にはテレマティックス機能もあり、ブースト圧やギアボックスの温度、エンジンのパワーとトルク、操舵角など、サーキット走行時に確認したい情報が表示できる。 ルノーではおなじみのオーディオ操作レバーは、アルピーヌでもステアリングコラムに健在。少なくとも音量調整には便利だが、シフトパドルを下まで伸ばすことができない原因にもなっている。この手のクルマにどちらが重要かは、いうまでもないだろう。 ■燈火類 LEDヘッドライトは標準装備で、ハイ/ローとも申し分ない仕事ぶり。闇夜を昼間のように明るくする、というほどではないが。 ■ステアリングとペダル ペダルレイアウトは良好で、ブレーキは右足のほうが操作しやすいが、左足も十分に届く。フットウェルも狭苦しくはない。ステアリングコラムは、背の高いドライバーなら、もう少しテレスコピック量がほしいと思うかもしれない。
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
加速するに従って満ちてくるA110Rのグリップ感は、操舵が加わるとより一層わかりやすい。鼻先の向きは、驚くほど軽く、俊敏で、ダイレクトに変わる。そして、サスペンションをしっかり上下動させながら走っていく。 ボディの挙動は、引き締まっていてタイトに抑えられている。ほかのスポーツカーに、公道で同じような動きを見せるものはかなり少ない。ターンインからアペックスを経てコーナーを抜けるまで緩慢さはなく、スピード的なポテンシャルは有り余るほどある。 しかしまた、サーキット志向のクルマに想像するより、手強い路面でも落ち着いて飛ばせる一面も併せ持つ。アルピーヌの手が込んだダンパーは、オンロードでのみごとな平静さをもたらすために、めざましい仕事をする。行動向けのサスペンションセッティングでは、B級道路をすばらしく穏やかにいなす。大きく鋭いインプットや、轍とバンプが絡んだときには、グリップやリバウンドが衰えるので、ステアリング越しのインフォメーションは豊富だが、しゃかりきに抑え込もうと苦闘する必要はない。 そうしたバンプでの穏やかさは、このクルマを走らせる上で大きな自信を与えてくれるが、限界域で見られるシャシーバランスも、A110に予想するものとまったく違う。ただし、ジャイアントキリングなラップタイムを出そうという野心的なクルマにそぐわないものではない。 標準仕様よりリアスタビライザーのレートを高め、ダウンフォースの中心がリアよりになったことで、ハンドリングはこれまでのアルピーヌよりスタビリティ志向になっている。 ガッチリ安定したリアアクスルは、すべりやすいコンディションでも従順さを増すが、ほぼどんなときでもストイックにコントロールされている。そのためコーナリング時のグリップレベルは、しばしば重みのある手応えのステアリングを通して感じられる前輪の横グリップ限界のフィーリングによって補われる。 また、アペックスへ大胆なスピードで飛び込んでも、何が起きるか心配することはない。標準仕様のA110なら、穏やかなダイブやロール、振動やスリップが入り混じるバレエのようなハンドリングを楽しめるのが個性になっているところだ。