アルピーヌA110 詳細データテスト 完成度の高いシャシー モアパワーがほしい もう少し安ければ
内装 ★★★★★★★★☆☆
新たなシートや6点ハーネス、ドアハンドル代わりの鮮やかなループは、通常モデルとの違いがわかりやすいポイントだ。 妥協のない仕様に見えるが、ポジションが決まったシートに収まってしまえば快適だ。効果的にサポートしながら、腰やふとももが締め付けられることはなく、長距離移動でも不快にはならない。アルピーヌのほかのスポーツシートと同様、座面の高さと傾斜は手動調整可能。ただし、トルクスネジ式なので、自分で触れないならディーラーに頼むことになる。 6点ハーネスは、ベルトが左右に分かれるような金具を備え、締める際にもたつかずに済む。シートレールのリリースバーを覆う赤いプラスティックのカバーもよく考えられていて、ベルトを締めた後でもシートの前後スライドがしやすい。 デジタルメーターとインフォテインメントディスプレイは、A110全車に共通のアイテムだ。ダッシュボードやドアトリムはアルカンターラで覆われ、金属ペダルと下部がアルミ剥き出しのセンタートンネルを備える。物入れは少なく、アクセスしづらいが、居住性は日常遣いに困らないものだ。 後方を確認しようとして、ルームミラーがないのに驚くが、キャビンの背後が完全に塞がれて窓がないのだから、それも当然だ。ありがたいことに、ドアミラーと良好なポジションのクオーターウインドウ越しの視界で、後方確認は事足りる。 ラゲッジスペースは、後方にヘルメットとバッグが収まるくらいのトランクがある。さらにフロントにも、浅いけれど広さのあるトランクが用意されている。大きなスーツケースを積むなら、助手席の足元くらいしか置き場はないが、ふたりで週末のドライブ旅行に行くくらいなら不足はない。
走り ★★★★★★★☆☆☆
テスト日のコンディションは良好で、加速性能は公称値に届かなかったものの、これまで計測したどの仕様よりも速かったのは確かだ。 ローンチコントロールは、スポーツとレースの各走行モード選択時に使用できる。電子制御スタビリティコントロールをESCトラックに切り替えたら、ブレーキを踏み込んで、左右のシフトパドルを長く引く。するとエンジン回転が3500rpm付近を自動でキープし、ブレーキペダルに加えた力を抜くのに比例して徐々にクラッチをつないでいき、素早いが乱暴すぎない発進をする。 また、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を温めておけば、グリップはあり余るほど。常に挙動をコントロールできる。 0-97km/hの実測タイムは4.2秒で、2018年に計測したA110プルミエールエディションより0.5秒早い。ゼロヨンは、標準車より0.7秒早い12.5秒だ。 もちろん、広く見れば10万ポンド(約1870万円)近いスポーツカーとしてはとくに速い訳ではない。BMW M4コンペティションやポルシェ・ケイマンGT4 RSは3.9秒/12.1秒だ。となると、A110Rを走らせてすぐに浮かんでくる疑問がある。 サーキット仕様のスポーツカーには、どれくらいのパワーが必要なのか。本当に速い加速性能とはどれくらいか、また、本当に魅力的でよく回るマルチシリンダーエンジンが必要なのか、ということだ。 少なくともそのひとつは、答えるのが難しくはない。というのもA110Rは、公道でもサーキットでも、興奮を覚えるくらいには速いからだ。中回転からさらにパワーを上げると、レスポンスはややソフトで遅れがあるものの、そのあとは6000rpmを大きく超えるまでスッキリとスポーツカー用ユニットらしく回る。 だから、4気筒ターボとしては十分に強力だ。ギア比の決まった、マニュアルモードで歯切れ良く変速するDCTとのマッチングも抜群だ。 しかし、アルピーヌがエグゾーストやインテークのレゾネーターパイプ、エンジンカバーのチューンに力を注ぎ、深みとドラマティックさのあるサウンドを生もうとしたものの、豊かさと独特の機械的なアピールが、絶対的なパワーと同様にやや足りない。この価格のスポーツカーなら、どちらもかなりの満足が得られる。A110Rのような、どこまでも走れそうなシャシーも備えていることは言うまでもない。