気体流量10ミリ秒で切り替え…東大が半導体製造装置などに提案、「高速バルブ制御技術」の効果
東京大学の服部光希大学院生と大西亘准教授らは、気体流量を10ミリ秒で切り替える高速バルブ制御技術を開発した。制御信号を送ってから流量が目標値に到達するまでの応答時間を98%削減できる。空気は伝搬が遅いため流路を切り替えると振動が発生してしまう。振動を抑えつつ急速に切り替えることが難しかった。ガスを精密に供給する半導体製造装置や空圧機器などに提案していく。 【図解】高速バルブ制御技術の仕組み 流路を開閉する弁体の位置を計測できる圧縮性相殺バルブで空気振動などのモデルを作り制御に反映した。バルブの中で弁体を上下させると流路の断面積変化などを含めて複雑な流れが生じる。これを精密にモデル化するのはコストが大きいため、弁体の位置に応じて流量のデータを事前に取り参照処理できるようにした。 ノイズの定常変化と減衰振動、気体の粘性摩擦などを元にバルブへの入力値を計算して制御する。カスケード制御と組み合わせて検証すると、応答時間が458ミリ秒から10ミリ秒に短縮した。バルブに開くという信号を入力してから10ミリ秒で目標流量に到達する。振動も抑えられた。 半導体成膜装置ではガスの供給量を精密に制御でき、積層する原子層の厚みや間隔などを調整できるようになる。エアシリンダーなどの空圧機器では、制御性能が水や油などの体積変化の小さな流体機器に近づく。高速応答が必要で電動のアクチュエーターを用いていた箇所に安価な空圧機器を利用できる可能性がある。