おおのたろうさんの絵本「じんせいさいしょの」 ユーモラスな「赤ちゃんあるある」の数々に共感
幅広い世代の親子の絆をつなぐ
――幅広い世代から支持されている本書には、子育て中の読者はもちろん、「子どもや孫の小さなころを思い出して懐かしい」「自分の赤ちゃん時代に思いを馳せた」といった反響も。80代の読者から手紙で感想が送られてきたときは驚いたという。 80代の方から「自分は今、人生を終えようとしているけれど、この絵本を読んで自分自身が赤ちゃんのころはどうだったのだろう、自分の母もこんなに優しい視線で見守ってくれたんだろうか……とあたたかい気持ちになった」といった内容のお手紙をいただいて。そうした視点で絵本を読んでもらえたことに心を打たれました。 ほかにも、認知症が始まったお母さんに娘さんがこの絵本をプレゼントしたら、「そういえばあなたもこんなことしていたよね」と記憶がよみがえって会話のきっかけになった、という感想も。読者に楽しんでもらえればいいなと思ってつくった絵本ですが、幅広い世代の読者の方から感想をいただくことができて、作者としてもうれしいですね。
子育てに疲れたときは「幽体離脱」
――2024年は読者の声に応えて、1歳半から3歳までの「あるある」を描いた『続じんせいさいしょの』(KADOKAWA)、子どもが誕生してから1歳までの思い出を記録できる書き込み式の『じんせいさいしょの育児日記』(KADOKAWA)も出版した。 ありがたいことに多くの読者の方から、「続編が読みたいです!」という声をいただいて。2~3歳って生まれてすぐの赤ちゃん時代とはまた違った、面白さとかわいさが出てくる時期じゃないですか。一方で“イヤイヤ期”という大変な試練もあります(笑)。続編でも1冊目と同じく大ボリュームで、描き下ろしを前作以上にたくさん入れて制作しました。 『じんせいさいしょの育児日記』は、「生まれた日のこと」「はじめて話した言葉」「はじめて笑った瞬間」など、「じんせいさいしょの」出来事が楽しく書き込める育児日記です。手書きのメモや文章って、短くてもすごく情報量が多いと思うんですよね。一文を読んだだけで、そのときの情景や気持ちをパッと思い出すことができる。 子育てしていると、子ども時代を追体験しているように感じることがあります。初めてのことに対する驚きやうれしさ、失敗なんかも子どもの目を通してもう一度体験できる。幸せだな~って日々思いますけど、やっぱり余裕がなくて大変なとき、疲れてしまうこともありますよね。 そういうときは自分たちの状況を、いったん「幽体離脱」するような気持ちで見るようにしています。イヤイヤに手を焼いているとき、10年先の自分を召喚して見てみると、「未来の自分から見れば、このイヤイヤもかけがえのない一瞬」と思えるかもしれない。「あ、今日はお尻が山になっている『イモムシ型イヤイヤ』だな」と感じて、面白がることができたらしめたものです。日々、ちょっとした笑いを取り入れながら子育てできたらいいな、といつも思っています。 <おおのたろうさんプロフィール> 絵本作家、イラストレーター 香川県生まれ。絵本をはじめ、イラストレーション、GIFアニメーションなどの制作も手がける。近年は赤ちゃんの日常を描いた絵本を多数発表。絵本作品に「あかちゃんあかちゃん」シリーズ(大泉書店)、『よしよしよしおさん』『いないいないぶー』(いずれもポプラ社)などがある。二児の父。 公式サイト「OONO TARO ALL STARS WEB」 https://www.taro-allstars.com
朝日新聞社(好書好日)