再び貿易赤字が拡大した根本的な要因
4月21日に発表された財務省貿易統計(速報)によると、3月の貿易赤字額は約1.4兆円で3月としては過去最大となり、2月にやや収まったかにみえた赤字拡大が再び生じています。 輸出をみると、金額では対前年でプラス1.8%ですが、数量ではマイナス2.5%です。円安になれば日本の(純)輸出が増えて、投資も増加し景気回復に寄与するというのは、見込み違いだったと言わざるを得ません。(昨年来の景気回復は、もっぱら財政政策と消費税増税前の駆け込み需要がもたらしたものでした)
ただし、今後貿易赤字はやや縮小する可能性もあります。貿易赤字の拡大の要因に、消費税増税の駆け込み需要の増加による輸入が増大も影響していたからです。実際、鉄鋼や木材、家具などの住宅関連の輸入が最近大きく伸びていました。それでも、貿易赤字から脱却するのは、しばらくは難しいでしょう。天然ガスなどのエネルギー関係の輸入は増加したままで、縮小のめどが立っていないからです。 円安にもかかわらず、なぜ輸出が増えて貿易収支が改善するということが起きないのでしょうか。為替と貿易収支の関係はそう単純ではなく、経済構造や景気動向からの影響を受けるのです。 円安により輸出(量)が増加するためには、日本の輸出企業がドルなど外国通貨建てで商品の値引きを行い、さらに、値引きにより海外でより多く売れるようになることが必要です。現在、日本の輸出構造ではそのようなことが生じにくいため、とくに2000年代以降は、円安による輸出増加の効果が見られなくなっています。
理由は主に2つあります。1つは日本からの輸出において消費者が購入する商品ではない、中間財と呼ばれる財の比重が高まったことです。たとえば、輸出項目で目立つのは一般機械のほか、プラスチックや有機化合物といった化学製品、鉄鋼、非鉄金属、半導体等電子部品、電気回路等の機器などです。 値下げして売れるようになるのは、たくさんのお客さんを相手にするような商品(最終財)です。中間財は、主に企業相手で、値下げしたからといってより多く売れるとは限りません。さらに、そのような機械や部品、化学製品が高技術により海外企業から選ばれているとすれば、そもそもそれほど値を下げる必要がないのです。