「冷凍睡眠」から目覚めたら500年後の世界は壊滅していた… 無力な主人公が家族の“その後”を知るために日本を目指す話【担当編集に聞く】
家族とともに冷凍睡眠装置(コールドスリープ)に入り500年もの間眠っていた男が、文明が崩壊した“ディストピア”で日本を目指す姿を描いた山田芳裕さんの漫画「望郷太郎」(「モーニング」にてブロック連載中)。先日、コミックスの第10巻が発売されたことを記念して編集担当の井上威朗さんにインタビューを実施。ヒット作誕生の舞台裏について話を聞いた。 【漫画】500年後の未来は?「望郷太郎」を読む ■10巻は「“野性の暴力”を突き詰めるという本作のテーマの到達点が見られる」 ――「望郷太郎」が生まれたきっかけを教えてください。 【井上威朗】「へうげもの」は、500年前に“日本人”なるものの起源を探求する作品でした。次の作品ではそのベクトルを反転させ、500年後に“日本人”はどうなっているのかを探ったらおもしろいのではないか。こうした発想から「望郷太郎」は生まれたと聞いています。 ――本作の見どころについて教えてください。 【井上威朗】主人公・舞鶴太郎が物理的には無力なまま、500年後の世界で起きるすさまじい危機を乗り越えていくところでしょうか。その結果、太郎は「戦争をやめさせる方法」を必死で考えつき、ギリギリの局面で命を張りながら実践していきます。読めば何度もブチ上がる、名場面に出会えますよ! さらに、「望郷太郎」で作者が描こうとしているテーマのひとつに“野性の暴力”を突き詰める、というものがあるのですが、10巻はその到達点を見せてくれるすごい巻になっています。少しネタばらしすると、超巨大なパンダがむちゃくちゃに大暴れして人を食べまくります。活劇としてもすさまじい出来なので、楽しんでいただけたら幸いです! ――創作秘話があれば教えてください。 【井上威朗】家でも車でも服でも、500年経ったらどうなるのか。これが本当によくわからないのです…。専門的な学会に取材をお願いしても「答えようがない」と断られてしまっています。 ただ、管理さえよければ、500年前のさまざまな品が現存していることは博物館に行けば簡単にわかります。なので500年後も、雨ざらしとかになってなければ、具体的には氷漬けになっていれば、相当なものが残るのではと仮定しています。 主人公自身も500年冷凍されていたという設定ですし、こうした前提で創作を進めてはおります。もし「500年後の●●」についてシミュレーションできる専門家の方がいらっしゃるなら、ぜひ取材させていただきたいです! 取材協力:モーニング編集部・井上威朗