カーオブザイヤー2024-2025は「フリード」! 「清水和夫のオレテーマは4駆ディーゼルでCX-80!!」その2.【清水×高平クロストーク・COTYがなんだ!】
知識と行動力とドライビングスキルを併せ持つ、国際モータージャーナリスト・清水和夫氏と、モータージャーナリスト・高平高輝氏によるクロストーク第3弾その2.は、2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーの投票結果をうけてのアレコレと、日本カー・オブ・ザ・イヤーの✕をぶっちゃけた! さて、今年のイヤーカーは? 40年選び続けてきた清水和夫の1位とは? TALK:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)、高平高輝(Kouki TAKAHIRA)/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU) 清水×高平のカーオブザイヤー記事を見る 2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤーは「ホンダ フリード」に決定! 2024年12月5日(木)、2024-2025 第45回日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカー他、各賞が決定した。受賞された皆さま、おめでとうございます! 【2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー 各受賞車】 ■日本カー・オブ・ザ・イヤー:ホンダ フリード ■10ベストカー:スズキ フロンクス/トヨタ ランドクルーザー 250/ホンダ フリード/マツダ CX-80/三菱 トライトン/レクサス LBX/BYD シール(SEAL)/ヒョンデ アイオニック(IONIQ)5 N/MINI クーパー/ボルボ EX30 ■インポート・カー・オブ・ザ・イヤー:MINI クーパー ■部門賞 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー:三菱 トライトン ■部門賞 テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー:CR-V e:FCEV ■特別賞:マツダe-SKYACTIV R-EV 読者の皆さまはどのクルマ推しだった? 納得の受賞車ですか? そして40年間日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務めている国際モータージャーナリスト・清水和夫が選んだのはこのクルマだ! 清水和夫の選んだ“オレのイヤーカー”は 1位「マツダ・CX-80」、2位「トヨタ・ランドクルーザー250」、3位「三菱・トライトン」 編集部:ズバリ、清水さんが選考したクルマは何ですか? 清水:1位マツダ・CX-80、2位トヨタ・ランドクルーザー250、3位三菱・トライトン! 今年のオレにはディーゼル4駆以外見えない!! 編集部:それはなぜですか? 清水:2004年に『ディーゼルは地球を救う』という本を書き(『ディーゼルこそが、地球を救う: なぜ、環境先進国はディーゼルを選択するのか?』/ダイヤモンド社 [2004年4月1日刊行])、その信念は1mmもずれていない。いざとなったらディーゼルは豚の胃袋だから天ぷら油でも走るし、どうだザマアミロ!みたいな(笑)。 編集部:その中でも、マツダ・CX-80が1位という理由は? 1位マツダ・CX-80にしたワケは直6ディーゼル! マツダのラージ商品群に期待!! 清水: 6発(直6)のディーゼルってそれはそれで魅力。ただ失敗したのは、サスペンションやトルコンレスのトランスミッションかな。トルコンの代わりにモーターを配置したけど、そのクラッチ制御の難しさっていうのはある。 高平:でもだいぶ良くなっているとか。 清水:CX-60より断然良くなっているよ。サスペンションもダンパーを換えたりしているので、CX-60の反省は相当しているよね。 高平:良かった~。 編集部:CX-60はプロトタイプ時にそういうネガティブ意見がたくさんあったから見直したっていうことなんですか? 清水:いや、プロトは路面がフラットなサーキットだったので、ネガティブな意見はでなかった。しかし、量産市販車のメディア試乗会でリアルワールドの路面でネガティブ意見がたくさん出たのよ。 高平:CX-60とCX-80は兄弟車というか、基本が全部同じ、CX-80の方がちょっと全長は長くて3列シートで(全長:CX-60=4740mm/CX-80=4990mm)、さらにCX-60より高級にしなくちゃいけないんだけど、そもそものCX-60の出来が悪かったので“大丈夫か?”ってみんな心配していたんです。でも、CX-60開発時のマツダのエンジニアは認めない人もいて、“それは清水さんの乗り方のせいでは?”とか…。でもミッションなどのガッコンガッコンするヤツは問題になるよ…って、試乗したみんなに言われていた。 そうこうするうちに新しいエンジニアの人に変わり、それからは夜なべしたりしてもう必死! スタビライザー取れ!とかダンパーがど~のこ~の…とか、CX-60はリコールを4回くらいやった。そして、その知見をCX-80に全部つぎ込んだので、発表も1年遅れた。CX-60が何も問題なく出てド~ン!と売れていれば、CX-80も予定通り発売されたんだけどね。 清水:日本では、2列シートのCX-60、3列シートのCX-80で、エンジンはCX-60が3.3Lのディーゼルと2.5Lガソリン直4のPHEV、CX-80は3.3Lのディーゼルとガソリン4気筒のPHEV。だけどアメリカは、その間に奇数のCX-70とCX-90があり、ちょっとワイドボディにしてあり、エンジンはアメリカではディーゼルが出せないから3.3Lの直6ガソリンと2.5Lガソリン直4 のPHEVの2種。 ということで、マツダのラージ商品群はCX-60、70、80、90と4車種ある。コレが上手くいったらマツダはV字回復できる。だって、メルセデス・ベンツとBMWと同じような縦置き/FRベース/4駆のプラットフォームなのに、値段は半分以下!(CX-60=3,795,000円~5,670,500円[4WDディーゼル]/CX-80=4,180,000円~6,325,000円[4WDディーゼル]) 高平:物凄く野心的ですよね。でも、やっぱりこの滑らかじゃない変速とかは、ランドローバーやBMWの6気筒ディーゼルに比べたら…って試乗会で言ったら途中で遮られて、“そういうのと比べるんですか!?”ってエンジニアに言われました。でも、お客さんは何のクルマと比較するかわからないじゃないですか。 清水:まるで織田信長みたいな野望は歓迎するけど、開発を急ぎ、コスト削減を推し進めることで、製品に影響がでたことは当時の経営メンバーは猛省すべき。CX-60の本質的な課題は後で居酒屋トークするからね! 編集部:そんな苦労の末にCX-80が出て…。 高平:悪くなかったのでホッとしています。 清水:地元のサプライヤーを使いならが、まさに血がでるような思いで開発に取り組んだ現場には頭が下がるけどね…。 2位はトヨタ・ランドクルーザー250、3位に三菱・トライトンと、4駆ディーゼル祭りだ! 清水:オレの2位はランクルちゃんのディーゼル4駆。3位が三菱・トライトン。 言い方を変えると、10ベストカーに選ばれたクルマはどれを1位にしても理由はつけられるよね。それくらい実力のあるクルマが揃っているっていう風に一応言っておいて、その中でさらに自分は何がベストなのか?っていう話だよね。 ちなみに、オレが選んだ10ベストはディーゼル軸で評価。この3台プラス、メルセデス・ベンツ Eクラス、BMW 5シリーズ、MINIカントリーマンと、いずれもディーゼルがチョイスできるモデルだ。 編集部:そこに選んだ人の個性も出てくる? 清水:個性というか、自分のライフスタイルを考えて、オレがあと10歳、歳が上だったらホンダ・フリードかもしれないけど、70歳の今のところはディーゼル4駆だよ、みたいな。地平線の向こうまで走っていきたと思うから。 まぁいろんな視点があるからね。一昨年のCOTYでスズキ・アルトに10点入れたときにアルト買うか?っていったら買わないけど、“車重600kgで車両価格100万円をよく切った! 他のメーカーにはできない唯一無二、オンリーワンの技術だよね!”っていう産業論として評価したところもあるし、それはちゃんと選考理由を書いてある。 日本カー・オブ・ザ・イヤーの✕なところをCOTY改善のために吐く! 編集部:イヤーカーはホンダ フリードが受賞しましたけど、発表前の時点では今回、どれが取ると思っていましたか? 清水:予想屋としたら、スズキ・フロンクスがいっちゃうんじゃないかな?って感じていた。気持ちはスズキに取らせたいよね、スズキ初のCOTYイヤーカーになるし。まぁSUBARU初受賞の時(第24回 2003-2004年)はレガシィ応援団に回った…イヤな思いもしたけど。“和夫、オマエが票まとめたんだろ!”みたいに実行委員に言われてさ。最近もある実行委員は「あのときの〇〇カーが選ばれたのはおかしい」って言うんだよ。ちょっと待ってよ、実行委員会が選任した選考委員なので、どんな結果になっても受け入れるのが民主主義じゃないの? そこがわかっていない人がいるのは問題。 高平:昔のポイントシステムだったからであって、今は1~3位の3台しか選べないから波乱的な、番狂わせ的なことは起こらないんじゃないですか? (※2023年から、各選考委員は持ち点16点を最上位の1車種に10点、2位に4点、3位に2点を配点。それ以前は各選考委員の持ち点25点を上位5台に配分、1位は10点、2~5位は残り15点を任意に配点) 清水:昔から思っていたんだけど、もし1人1票しか入れられなかったら結果はどうなっていたんだろう?って、シミュレーションしてみたいよね。 高平:おっしゃる通り。 清水:25点でやる(~2022年)、10点でやる(2023年~)のではなくて、アカデミー賞やエミー賞みたいに1人1点。 高平:MLBのMVPに大谷翔平へ1人1票、それだけ!って感じ。 清水:1人1票、しかも無記名。そのほうが忖度効かないだろうなと思うんだけど。 高平:小林彰太郎さん(カーグラフィック誌創刊者・名誉編集長/自動車評論家、自動車社会史研究者)が昔から言っていたのは、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーのように、メディア実行委員の1番大事なところ(実行委員長、副実行委員長等)を、少なくとも3年ごとにローテーションしなさいと。外すのではなくて、例えば3年経ったら3人下りて他の3人が入って、というふうに固定化しないようにしましょう!って言っていたんですけど、でも当時の実行委員に大反対された。 清水:以前、鈴木俊治さん(CARトップ誌元編集長)が実行委員長の時にオレが言ったのは、2リーグ制にして、奇数年と偶数年に選考委員を半々に分けて、各年30人とか40人くらいで選考委員をやり、投票しない他の人は応援団に回る…とか。そうすれば選考委員をもっと入れられる。今は選考委員60人(上限/2024-2025は59人)だけど、80人にして奇数年40人/偶数年40人として入れ替えていけば…とか、いろんなやり方あると思うんだけどね。 さらに言うと、媒体推薦で選任される選考委員以外は、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)が選択するのもいいよね、だってAJAJのほうが個々のライターさんの実力を知っているから。もちろん、AJAJはAJAJ以外のライターさんも推薦する懐の広さも必要だけど。 【2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー 10ベストカー】 若手ジャーナリストにもっとチャンスを与えたい 編集部:清水さんは選考委員、何回目でしたっけ? 清水:オレ、なんと今年で40回目だよ。30歳の時に三栄(当時は三栄書房)からCOTY選考委員に推薦された。それから40年間、自動車メーカーとの縁や可能性、出会いがあったからこそ今の自分があると思っている。だから若いジャーナリストにどんどん選考委員にさせてあげたいなと思っているんだよ。だから70歳定年制度も悪くない。その分を若い人たちに割り振ってあげる。AJAJも同じだと思う。我々はもう自分で評価できるからSNSで “和夫・オブ・ザ・イヤー”だってできちゃうわけ。力のあるジャーナリストは自分で発信できるので、むしろ閣外に出てCOTYそのものを評価していった方がCOTY全体への刺激にもなる。 清水和夫が第5回から選んできた日本カー・オブ・ザ・イヤー 編集部:清水さんが選考委員になられたのはMR2(AW10/11)がイヤーカーの第5回(1984–1985年)ですかね? 清水:そうそう! MR2が取った時にオレはセリカGT-FOURに入れたから“空気読めないね…”って言われて! でもMR2は当時、筑波サーキットのカートップ誌テストで全然ダメだったんだよ。 高平:その頃、清水さんは“ナイフの和夫”と呼ばれたくらい、カリッカリの厳しいレーサー兼ジャーナリストだったし、筑波アタックも超厳しかった。 清水:ベストモータリングもやっていたしね。 高平:すんごい厳しい。“ダメダメ、足がウンコ!”みたいな、そういう厳しい意見をバンバン発していた。 清水:当時はベストモータリング、NAVI DST(ダイナミック・セイフティ・テスト)、カートップの筑波テストなどで、限界性能検定委員を努めていたからね。ダメなクルマはバレちゃうのよ。 編集部:1984年だとレースは何に参戦していた時代ですかねぇ? 清水:ミラージュ、シビックのワンメイク。オレ、シビックレースの初年度チャンピオン♪ 編集部:その頃のCOTYはどんな採点法だったんですか? 清水:ン~…25点法じゃなかったと思うんだけど…覚えていない。 高平:確かヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーから学んで作ったシステムなので、2022年まではほとんど同じだったと思います。持ち点が違ったりなどはあったかもしれませんが。 清水:昔、10ベストカーに輸入車のノミネートもあったとき、フェラーリが入ったことがあった。第15回(1994–1995)かな、大磯プリンスホテルの駐車場で試乗会をやった。で、みんな乗ると“やっぱフェラーリいいじゃん♪”って、そりゃそうだよね。でもオレ、FTOに10点入れた。FTOってATで8000rpmも回るんだよ。 高平:強~烈な嫌味だね! 当時の空気は三菱・ディアマンテだったかな? 清水:そうそう(笑)。でも本当にそう思ったんだよね。FTOでトルコンATなんだけど8000rpmも回ったんだから。メーカーから見たら本当、イヤなヤツだと思うよ。イヤなヤツだけどわかりやすいとも言われけど。 高平:COTYのイヤーカーを取るのにメーカー側は必死でさ、“黒革の手帳”に選考委員それぞれのいろんなことが書いてあるっていう…ね。 清水:まぁ、ね。でもインポートの〇〇の社長はそういうのに一切興味が無く、欧州の本社が世界のカー・オブ・ザ・イヤーから抜けようっていう動きも一時あった。もうね、今の時代、言えないことだらけだったよ。 兎にも角にも若手を入れ、実績を積ませないとね。メーカーだって、オッサンたちなどと話すよりも若い人と話したいはず。また、選考委員と実行委員会がお互いにリスペクトしないと、健全な運営はできないと思う。 ・・・・・・・・ 40年間、COTYの選考委員を続けてこられたからこそ、あえてものを言える選考委員でいなくてはいけないと語る清水和夫さんと、長年一歩外から見続けている高平高輝さんだからこそ見えるものがあるのだと実感。
清水和夫
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