登山者のための火山のリスクヘッジ ! 噴火リスクがある山に登るときの準備と対策とは
国土の約70%が山地という日本。4つのプレートがせめぎ合う場所にある国土は、〝地震大国〟であると同時に、〝火山大国〟でもあります。富士山をはじめ、登山者に人気の高い名山にも火山が多く含まれています。登山中にもしも噴火に遭遇したら……!? 【写真】噴火リスクのある活火山の登山のリスクヘッジを見る(全6枚) 今回は、実際に活火山に登山する場合に準備するべきものや、現地での注意点について、火山学・地質学の専門家で、『日本の火山に登る 火山学者が教えるおもしろさ』(山と渓谷社・ヤマケイ新書,2020年)を上梓された及川輝樹先生に教えていただきました。
噴火リスクがある山へ実際に登るとき
登山者のための火山のリスクヘッジ【vol.02 活火山に登るための計画編】でご紹介したように、まずは計画段階で対象の山が活火山であるかどうかを調べて、直近の活動状況を確認することが重要です。それを踏まえたうえで、火口近くでは長くとどまらないようスケジュールを組みますが、突発的な噴火に備えて、何か特別な装備は必要でしょうか。 「我々のような火山の研究者は、活動中の火山を調査するので、ふつうの登山装備に加えて、ガスマスク、ガス検知器、ゴーグルなどを持っていきます。 しかし、一般の登山者の方は、わざわざ噴火している火山に登るわけではないので、そこまでは必要ないと思います。山岳特有の気象条件など、さまざまなリスクが存在する中で、必要最小限の装備を工夫して、安全に乗り切っていくのが登山というスポーツです。荷物はなるべくシンプルにして、軽い方が素早い行動につながり、結果的に安全になるというのが登山というものの特性ではないでしょうか」と及川先生。 では、最低限持っておくべきものを教えてください。 「ヘルメットは持って行った方がいいと思います。我々も調査のときには持っていくのですが、噴火で飛来する噴石を防ぐためというよりは、火山にありがちな、不安定な箇所で転倒したり滑落した際に、頭部を保護するためのものです。落石も同じことですが、ある程度以上の大きさの噴石が飛んできた場合、ヘルメットでは防げません。ただ、被っていないよりはましなので、持っておいた方がいいと思います」(及川先生)。 突然の噴火に遭遇した場合、通常携行する登山装備で役立つものはありますか? 「火山灰が目に入ると、ガラス質の尖った結晶が含まれているため、目を傷めることがあります。ゴーグルがあるといいのですが、ふつうのメガネやサングラスなどでも、ある程度は防げると思います。 また、火山ガスに含まれる有毒な二酸化硫黄ガスや硫化水素は水に溶けるので、濡らしたタオルや手ぬぐいで鼻や口を覆えば多少濃度を下げることができます。その状態で走って逃げるのは現実的ではないと思いますが……。 通常携行する登山装備で、いざという時役立つのが、地図とコンパス、そしてヘッドランプです。 火山灰が大量に降ってくると、昼間でも暗くなって周囲があまりよく見えなくなります。そんな場合にライトがあると役立ちます。 また、予期せぬ噴火に巻き込まれた場合、想定していた登山道が通れなくなる場合もあります。等高線の入った地形図を持っていれば、少しでもリスクの少ない方へ逃げるために役立つので、コンパスとセットで携行するようにしてください」(及川先生)。