みずほの「楽天カードに出資」に透ける将来への布石 サービス協業や業務連携だけにとどまらない
家計の支払い能力などをより精緻に審査するため、クレジット限度額も大きくなりやすい。オリコでは新規カードに占める限度額100万円以上の構成比増加率が140%になった。 楽天市場に新たな与信手法が投入されることで利用者の購買力が高まり、オリコのデジタル分割払いの利用拡大にもつながるとみられる。 ■新連合にライバル警戒 これまで楽天カードが発行してこなかった法人カードでも連携する。この分野に強みを持つUCカードやオリコのノウハウを活用し、楽天市場などの加盟店に新たな法人カードを発行する。ほかにもバックオフィス業務や加盟店管理(アクワイアリング)業務などで連携を図る。
他のメガバンクグループ幹部は、今回の発表を受けて「手強いカード連合が誕生する」と警戒感をあらわにする。 カード取扱高で国内首位の楽天カードは、法人分野も強化することで取扱高やキャッシング残高が一段と増加する。みずほFGも楽天市場や楽天ポイントとの連携を深めることで、決済や銀行取引、証券取引の拡大につなげる算段だ。 近年、カード取扱高はキャッシュレス決済の浸透で急拡大しているが、カード会社の収益環境は厳しさを増している。カード発行会社はポイント付与などで多大なコストを計上する一方、収益源であるインターチェンジフィー(加盟店の開拓・管理を行っているアクワイアラーから受け取る手数料)は加盟店料率の引き下げなどを背景に低下圧力が強まっている。
アクワイアラーも、訪日観光客の増加で利用が急増している海外発行カードに頭を悩ませる。取引の都度クロスボーダー関連費用がかかり、逆ザヤに陥っているからだ。 ■見据えるのはカード事業統合? みずほFGと楽天カードが資本業務提携に乗り出した背景には、収益環境の悪化もあると考えられる。さらに、より合理的な経営体を目指して、両者のカード事業を統合する検討も始まる見通しだ。 取扱高で国内トップながらアクワイアリングや法人取引が弱い楽天カードと、会員募集などカード発行事業は弱いがアクワイアリングに強みを持つUCカードとは、補完関係にある。
みずほFGの木原社長は出資比率を14.99%にとどめたことについて、「私は慎重なので。まずは持ち分法適用前から入ろうかなと思った」と会見で述べた。 ただ関係者の間では、「将来的な事業統合への布石」との見方が浮上している。オリコの一部事業を含めたカード事業の統合時にみずほFGが出資比率を引き上げ、持ち分法適用会社化する公算が大きい。
北山 桂 :東洋経済 記者