企業年金は資産運用に良いインパクトを与えられるか? アセットオーナー・プリンシプルの策定議論が進展
社会保障審議会の企業年金・個人年金部会が5月22日、「確定給付企業年金の資産運用力向上のための施策」をテーマに開催された。今夏に策定される「アセットオーナー・プリンシプル」への対応も含め、資産運用の実施主体である企業年金が、いかに加入者の最善の利益を考えた行動ができるか、その行動を促すためのガイドラインや規制の在り方をどうすべきかということが議論された。特に、アセットオーナーに共通するプリンシプル(原理・原則)への対応では、「従来は企業年金という枠内での制度議論だったが、プリンシプルへの対応を求められれば金融機関などプロの運用者と同等の基準での対応が求められる。従来とは異なる覚悟が必要なのではないのか」という指摘もあり、アセットオーナーとしてより専門的な対応が求められる事態への緊張も感じられた。
「アセットオーナー・プリンシプル」は、新しい資本主義実現会議の下に開催されている資産運用立国分科会の下に、アセットオーナー・プリンシプルに関する作業部会が置かれて議論が行われている。2023年12月にまとめられた「資産運用立国実現プラン」において、「アセットオーナーがそれぞれの運用目的・目標を達成し、受益者等に適切な運用の成果をもたらす等の責任を果たす観点から、アセットオーナーに共通して求められる役割がある」との考えに基づいて「アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオーナー・プリンシプル)を2024年夏目途に策定する」と決められたもの。アセットオーナーの範囲は、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドなどと幅広く規定され、それぞれに運用の目的等が異なるが、その運用目的の違いはあったとしても、原理・原則としてアセットオーナーが守るべき規律を定めようとするもの。
現在の議論において5つの原則が示されている。原則1は、「アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を勘案し、何のために運用を行うのかという運用目的を定め、適切な手続きに基づく意思決定の下、経済・金融環境等を踏まえつつ、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである」。運用目的を明確にし、その目的に適うような運用ができるように努めるということで、これに対し異論は出なかった。