ノーベル平和賞「日本被団協」が求める、“唯一の戦争被爆国である日本”にできることは? ジャーナリストが解説
日本政府にも課題があります。戦争で被爆した世界で唯一の国でありながら、17年に国連で採択された核兵器禁止条約に日本は参加していないのです。政府は核保有国が参加していないことを理由にしていますが、日本自体がアメリカの核の傘の下にいることが自己矛盾になるため、参加できないのが本音だとみられています。 日本被団協は「せめて締約国会議にオブザーバー(観察者)参加を」と求めていますが、実現していません。唯一の戦争被爆国である日本は、核兵器のもたらす悲惨な状況を説得力をもって伝えることができる国です。今回の受賞を機に、政府にも核兵器の廃絶や核実験の禁止に向けてもう一歩前に出ることが期待されます。 核兵器禁止条約とは? 2017年に国連総会で採択された国際条約。核兵器を「非人道的な兵器」とし、その開発、保有、使用、威嚇などを例外なく禁止している。24年9月現在、署名したのは94カ国・地域で、批准(正式に認める)したのは73カ国・地域。世界にはアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9カ国の核保有国がある。こうした核保有国や核の傘に守られている国はこの条約に参加していない。 〇一色 清 ( いっしき・きよし)/ジャーナリスト。朝日新聞経済部記者を経て、「アエラ」編集長などを歴任。「報道ステーション」「グッド!モーニング」(ともにテレビ朝日系)のコメンテーターも務めた。
一色清