アングル:アジアのドル建て債、今年20%増の見通し 中国テック企業主導か
Scott Murdoch [シドニー 8日 ロイター] - 今年のアジアのドル建て債発行は、中国企業の起債や米利下げを背景に前年比で20%程度増加すると市場関係者は見込んでいる。 LSEGのデータとロイターが入手したタームシートによると、今年は年明け最初の数日で少なくとも60億ドルのドル建て債が発行された。韓国輸出入銀行やアルミ生産の中国宏橋集団などが起債している。 シティグループのアジア太平洋債券シンジケート責任者、リシ・ジャラン氏は「日本とオーストラリアを除くアジアのドル建て債発行は今年、約20%増加し2200億─2250億ドル前後に達する見通しだ」と述べた。昨年の発行額は約1750億ドルだった。 同氏は「こうした水準を達成するには、中国の大手テック企業の起債再開とインドの起債拡大が必要になる。インドでは多くの社債が自国通貨建てで発行されており、ドル建て債の復活が必要だ」と述べた。 過去2年間は大半の期間、米金利が上昇しており、アジアの多くの企業にとって、ドル建て債よりも自国通貨建て債や銀行融資の方が資金調達コストが安かった。 だが、FRBは昨年後半に3回の利下げを実施。今年1月下旬の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を据え置く見通しだ。 ジャラン氏は今年のドル建て債発行をリードするのは中国の巨大ハイテク企業だと予想。電子商取引大手のアリババと美団は昨年後半、ドル建て債で計75億ドルを調達しており、金融関係者はこうした流れが今年も続くと予想している。 <原動力は中国企業か> ディールロジックのデータによると、中国の昨年のドル建て債発行は前年比81%増の771億ドル。ただ、こうした急激な増加にもかかわらず、発行額はピークを付けた19年の2105億ドルを大幅に下回っている。 バークレイズのアジア太平洋資本市場ファイナンシング担当責任者、アビナシュ・タクール氏は「高格付けの中国企業は今、起債が可能だ。23年や24年前半と比較して金利も安心できる水準にある」とし、「資金調達が必要なハイテク企業やメーカーが起債するだろう」と述べた。 ただ、中国の不動産企業は市場の低迷継続や債務残高の多さを背景に、近い時期の起債再開は難しいとみられている。 中国以外では、韓国のドル建て債発行が昨年14.5%増加し500億ドル近くに達した。 法律事務所アシャーストのパートナー、ジニ・リー氏は、海外勢の間では、中国経済に対する悲観的な見方から他のアジア市場の人気が高まっていると指摘。ただ、韓国については、政治の混乱が落ち着くまで投資を見送る投資家もいるかもしれないと述べた。