穏やかな山容、だけれど「剣山」。その由来を紐解く山旅|山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記 Vol.4
次郎笈へと続く優美な稜線と迫力の御塔石。
山頂でおにぎりをほおばり、ひと休み。その後、次郎笈(じろうぎゅう)へと続く稜線を歩く。ミヤマクマザサに覆われた稜線上には、小指の先でなぞったかのような最小限の道が敷かれている。自然のキャンパスに描かれた優美なラインは、本コースを象徴する景観だ。 稜線上の道をゆっくりと下る。そのまま進み、次郎笈の山頂を踏んで折り返してもいいのだが、今回は途上の分岐を右へ曲がり、遊歩道ルートを使って西島駅を目指した。山の斜面やガケ沿いに敷かれた細い登山道をしばらく進む。と、先に感じたモヤモヤがついに氷解する。 大劒神社の後方に屹立する御塔石が突然現れ、その全貌を目にできる。まさに巨石、間近で見ると圧倒される。「剣」の由来、象徴にふさわしい。これを見れば、うなずける。 この先、御塔石の余韻とともに西島駅までのんびりと歩く。森林浴を楽しむ最後の下り、道がほぼ平坦になると間もなくスタートした鳥居の脇の道に出る。剣山の北麓を周回する今回のコースは、わずか2時間程度の行程。穏やかな山容、四国中を見渡せる展望を楽しみ、歴史や文化にも触れながら散策する至宝のルートだ。 見ノ越に戻り、いま登ってきた剣山を改めて見上げてみた。日はまだ高く、爽やか風が吹いている。無事下山できたことに感謝していると、ふと安徳天皇の悲話が頭をよぎる。孫を抱き「波の下の都」へと向かった祖母の慈愛に、剣の山はいまも見守られている……。優しい山容の剣山が、そう語っているように思えた。 <コースデータ 剣山> コース:剣山登山リフト西島駅~大劒神社~剣山本宮宝蔵石神社・剣山頂上ヒュッテ~剣山~二度見展望所~名水百選御神水~剣山登山リフト西島駅 標高:1、955m コースタイム:約2時間 距離:約4km。 <下山後のおすすめの温泉 徳島県/松尾川温泉> 松尾川温泉 徳島県三次市池田町松尾黒川2-1 TEL。0883-75-2322 入浴時間:日帰り10:00~19:00 定休日:水曜・12月30日~1月3日 入浴料 日帰り520円(大人) 泉質:アルカリ性単純硫黄温泉 アクセス:見ノ越(剣山 見ノ越第1駐車場)より車で約1時間50分。 山直温泉の記事・情報は 『PEAKS 3月号(No。164)』の 「下山後は湯ったりと」のコーナーをご覧ください。 ▶「山本晃市の温泉をめぐる日帰り山行記」一覧はこちら。 **********。 ▼PEAKS最新号のご購入はAmazonをチェック。 編集◉PEAKS編集部/文・写真◉山本晃市(DO Mt。BOOK)
PEAKS編集部