【米政権交代】 マスク氏を「政府効率化省」トップに起用、トランプ次期大統領が発表 ラマスワミ氏も抜擢
アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は12日、自らの新政権で「政府効率化省(DOGE)」を新設し、そのトップに実業家イーロン・マスク氏を起用すると発表した。 マスク氏は宇宙開発企業「スペースX」や電気自動車メーカー「テスラ」の創業者。大統領選ではトランプ陣営に巨額の献金をした。 最近では、政府予算のほぼ3分の1に当たる少なくとも2兆ドル(約310兆円)を、連邦政府の支出から減らすよう求めた(具体的に何を減らすべきかには言及していない)。また、連邦政府機関には責任の範囲が重なっているものが多いとし、何百かの機関を廃止するよう提案している。 トランプ氏は、バイオテクノロジー分野の投資家ヴィヴェク・ラマスワミ氏も、政府効率化省でマスク氏と仕事をすることになると説明した。ラマスワミ氏は、大統領選の共和党予備選に出てトランプ氏と戦ったが、撤退してトランプ氏支持に回った。 ラマスワミ氏は予備選で、連邦政府職員の75%以上を解雇し、教育省や連邦捜査局(FBI)、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局など、いくつかの主要連邦機関を閉鎖すると主張していた。 トランプ氏はこの2人の役割について、「大規模な構造改革を推進する」方法をホワイトハウスの外から助言するものだと述べた。また、ホワイトハウスや行政管理予算局と協力し、年間6兆5000億ドル(約1000兆円)の政府支出における「大規模な無駄や不正」と闘うとした。 トランプ氏はさらに、マスク氏とラマスワミ氏は2026年の7月4日(アメリカ独立記念日)までに仕事を完了することになると説明。「より効率的で官僚主義の少ない小さな政府は、独立宣言250周年を迎えるアメリカへの完璧な贈り物になる」とした。 この発表に先立ち次期大統領は、国防長官にはFOXニュース司会者で、米陸軍の州兵としてイラクやアフガニスタンで戦闘経験があるピート・ヘグセス氏(44)を指名すると明らかにした。米メディアによると、ヘグセス氏は第一次トランプ政権中の2019年、アフガニスタンで民間人を殺害するなど戦争犯罪を問われた米兵に恩赦を与えるよう、大統領に働きかけたという。 次期大統領は、中央情報局(CIA)のトップには、連邦下院議員(テキサス州)と連邦検事を務めたジョン・ラトクリフ氏を指名するとした。どちらもかねて、トランプ氏を強く支持してきた経緯がある。 トランプ氏はまた、国土安全保障長官にクリスティ・ノーム・サウスダコタ州知事を指名した。ノーム氏は今年、副大統領候補に一時取りざたされていた。当時公表した自伝で、かつて自分の犬を「訓練できず」「危険だ」という理由で射殺していたことを明らかにしており、話題になった。 ■「マンハッタン計画」になぞらえる トランプ氏は政府効率化省の任務について、「政府官僚主義の解体、過剰な規制の削減、無駄な支出の削減、連邦機関の再編」を支援すると説明した。 同省の頭字語「DOGE」は、マスク氏の好きな暗号通貨ドージコイン(Dogecoin)にかけたものとされる。ドージコインはこの1週間で価値が急騰している。 正式な政府省庁には議会の承認や数万人のスタッフが必要だが、政府効率化省はそれとは異なる。 トランプ氏は政府効率化省を、第2次世界大戦中に最初の核兵器開発を極秘に進めたアメリカ政府の「マンハッタン計画」になぞらえた。 ■「官僚主義への脅威」とマスク氏 マスク氏はトランプ陣営が出した報道発表で、「これはシステム全体と、政府の無駄遣いに関わっている人たち、つまり多くの人たちに、衝撃を与えるだろう」とした。 トランプ氏による発表の後には、マスク氏は自身のソーシャルメディアのXに、「民主主義にとっての脅威? いや、官僚主義にとっての脅威だ!! !」と投稿した。 マスク氏は、トランプ氏が大統領選で勝利して以来、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の邸宅で毎日、同氏と過ごしているとされる。最近あったトランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話協議にも参加した。 一方、ラマスワミ氏は、トランプ氏の発表をソーシャルメディアに再投稿。「自分たちは、穏やかなやり方などしない」とした。 (英語記事 Trump picks Musk to advise on how to 'dismantle' bureaucracy)
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