つばさの党の裁判は「あの429号法廷」で…裁判所で記者が見た“厳戒態勢”とやりたい放題の“30分演説”
衆議院の補欠選挙で拡声器で演説を妨害したり、選挙カーを追い回すなどした政治団体「つばさの党」。 【映像】つばさの党の裁判 どんな様子?(法廷イラスト) 相手陣営の選挙運動を妨害した罪に問われている事件の裁判が東京地方裁判所で始まったが“現場(裁判所)”の雰囲気はどのようなものだったのか? テレビ朝日社会部司法担当 吉田遥記者に聞いた。 ━━今回はどのような裁判だったのか? 「4月に行われた衆議院東京15区の補欠選挙で、複数の陣営の選挙活動を妨害した公職選挙法違反の罪に問われているつばさの党元代表の黒川敦彦被告らの初公判が行われた」 ━━そもそも、このつばさの党とはどのような党で、黒川被告はどういった人物なのか? 「つばさの党は政治団体の一つで、弁護側によると代表の黒川被告は大阪大学を卒業後に研究員になり、投資の勉強などをしていたというがリーマンショックがきっかけで『このままでは日本は崩壊する』と思い、政治活動に興味を持ったという」 ━━今回の裁判の争点は? 「検察側は別の陣営の演説を拡声器で遮ったり、選挙カーで追い回すという行為が公選法の定める『選挙の自由妨害罪』にあたると主張。一方弁護側はこれらが実際には表現の自由、また政治活動の自由だとして無罪を主張している」 ━━裁判はどのような場所で行われたのか? 「429号法廷という東京地裁で署名な事件を扱った警備法廷だ。大人数の警備員がおり荷物チェックなど、かなり厳戒な体制が組まれていた。これは傍聴席のつばさの党の支援者などが不測の事態を起こすことを防ぐためだろう。傍聴券はかなり高倍率であり、裁判が始まる前に裁判長が『不規則発言をしたら退廷させる』と注意喚起するという“異例”な形で行われてた」 ━━裁判が始まってからはどのように進んだのか? 「初公判なので最初に罪状認否があり、黒川被告らが起訴内容を認めるかどうかという段階で、黒川被告は証言台に立ち、『立ってもいいですか?』と裁判長にお伺いを立てた。そしてA4の紙を4、5枚広げ、“演説スタイル”で証言台に手をかけ『皆さん聞いてください』と法廷の外まで響き渡るような大声で無罪を主張。このような“演説”を30分ほど続けた」 ━━裁判長は制止しなかったのか? 「途中で裁判長は『お互いに良い裁判をするためにもう少し冷静になって話しましょう』などと話しかけたが黒川被告は『ごめんなさい。これが僕のスタイルなので』と少ししおらしくなったものの、また演説が始まった」 ━━演説の内容は? 「『自分たちの行為は政治的には意味のある行為だ』というのが主張の根幹だ。さらに『捜査機関が黒川を逮捕するのは絶対にやっちゃいけないことなんだ』と叫ぶと、傍聴席にいたおそらく支援者であろう人が『そうだ!』と同調。裁判長が『不規則発言です』と注意する場面もあった」 ━━黒川被告は検察官にはどのような言葉をかけていた? 「かなり激しい口調で『我々を有罪にできないのは分かってるだろ?』と叫んだり、袴田事件を引き合いに出して、検察官の目を見て『検察はダメな組織なんだ』と激しい口調で話していたが検察官は目を閉じて聞いていた」 ━━裁判官への対応は? 「『裁判長は私と3日間一緒に過ごせば、僕が良い奴だって分かりますよ』などと話し、『裁判官はマスコミに洗脳されていて、あなたたち自身も権力者なんだ』と責め立てるような場面もあり、裁判長はやや渋い顔をしていた」 ━━弁護側はどのような主張をしているのか? 「弁護側は選挙妨害を禁止する公職選挙法の規定そのものについて主張を展開している。実は黒川被告らには司法記者であれば誰でも知っているような有名な弁護団がついているのだ。そもそも、公職選挙法の規定について実際にどんな行為が犯罪に当たるのかがよくわからず漠然としているので、選挙活動そのもののルールの整備が必要だと訴えていた。また、今回黒川被告らはこの裁判が始まる前に何度も請求している保釈が認められないことを “人質司法”と主張して国を提訴している」 ━━立候補者にはもちろん政治活動の自由があり、つばさの党の弁護側も「表現の自由」を主張している。まさに「自由対自由」という構図なのか? 「その通りだ。近年、SNSの使用など選挙活動の形は変わってきている中、つばさの党の行為が正当な選挙活動なのかどうか、たしかに公選法のルールでは明確にどこまでが妨害なのか分かりづらい点はある」 ━━今後の裁判の見通しは? 「今回の東京地裁の判断は『妨害行為に当たるかどうか』という一定の基準になるだろう。次回の公判については初公判後に裁判所・検察側・弁護側の3者協議が非公開で行われており、次回いつ裁判が開かれるのかは未定だという」 (ABEMA/倍速ニュース)
ABEMA TIMES編集部