ノルウェーのフィヨルド　Photo： Marco Bottigelli / Getty Images

北ヨーロッパのノルウェーでは夏に避暑をしたい人の増加、通貨安などにより、近年、外国人観光客が急増している。しかし、オーバーツーリズムを避けたい同国では、ある観光キャンペーンが打ち切られた。その背景にはノルウェーの深い信念があると、同国の新聞記者が英紙「ガーディアン」に寄稿した。 【画像で見る】「死ぬまでに見ておきたい」ノルウェーの超絶景

自然と共に育ち、アウトドアを愛するノルウェー人

ノルウェーの人々は、自然に強いこだわりをもっている。ノルウェーの子供たちが教えられるのは、「悪い天気などない、服装が悪いだけだ」ということだ。赤ちゃんは防寒着とオーバーオールを着せられて森に連れて行かれる。週末のアクティビティは屋外で、季節に応じてクロスカントリースキー、野生のキノコや野イチゴ狩り、山登りなどをするのが定番だ。 最近、田園地帯に外国人観光客を呼び込むための西ノルウェー観光委員会によるキャンペーンが中止された。これには、そんなノルウェーらしさがはっきり表れている。多くのノルウェー人は観光客を呼び込んで収入を増やすことより、自然環境の保護を望んでいるのである。 ノルウェーには非常に美しい自然がある。北部に位置するロフォーテン諸島などでは、冬にはオーロラ、夏には白夜を見られる。海岸沿いには非常に美しいフィヨルドが連なっている。だからこそ観光客が近年急増していることに驚きはない。 2023年、ロフォーテン諸島を訪れた環境客数は前年比15％増で、2024年の夏に同地域の道路を走る車の数は過去最高となった。ロンドンやアムステルダムなどから「北のパリ」と呼ばれる美しい都市トロムソ近郊へ直行便が就航したことも、急激な観光客増加の一因となっている。また、通貨のノルウェー・クローネのレートが下がったことで、米国やユーロ圏の人々はノルウェーを安く旅行しやすくなっている。 ノルウェーでは夏に、熱波から逃れたい人たちが喜ぶ、涼しく雨の多い日がある。それに加え、人里離れて人口の少ない観光地がたくさんあり、他地域のような混雑を避けられるのだ。イタリア・ベネチアのように5ユーロ（約800円）の「観光税」を訪問客から徴収するところもあるが、そうしたやり方はノルウェーでは考えにくい。ノルウェーらしいアプローチとは広告予算を削減し、観光客の来訪を抑止することだ。