「クリスマスも正月も祝う」日本の不思議な価値観。神道、仏教、キリスト教と多様な宗教が受け入れられた背景
日本史と地理は、別々の科目として学びますが、多くの接点があります。『日本史と地理は同時に学べ!』を上梓した駿台予備校地理科講師の宇野仙氏が日本で多様な宗教が受け入れられている背景を解説します。 【写真】『日本史と地理は同時に学べ!』(宇野仙)では、それぞれの時代を日本史と地理の両方の視点から解説 ■多様な宗教が生活に根付く 多くの日本人は、年末年始にキリスト教の行事であるクリスマスを祝います。テレビでは「クリスマス特番!」と題し、クリスマスプレゼントを渡し合う光景が流れます。 その数日後の正月になると、今度は神社に「初詣」という形でお参りに行きます。「神様、今年も良い年でありますように」と祈るわけです。一方で、葬式の際にはお坊さんを呼び、お寺にお墓を作ってもらう人がほとんどです。
もっと言うのであれば、「結婚」と聞くと多くの日本人は「ウェディングドレスを着て教会で式を挙げる」イメージを抱くのではないでしょうか。教会で式を挙げるのも、クリスマスと同じくキリスト教の文化ですよね。 日本人の日常生活には、なぜたくさんの宗教が受け入れられているのでしょうか? 地理と日本史の両方の観点から、このような不思議な状況が発生することになった原因をお話ししていきたいと思います。 そもそも、宗教はどのようにして生まれ、どうして人々の間で信仰されるようになったのでしょうか? いちばんの要因として挙げられるのは、共同体を維持するうえで有効だからです。
人口が増えると、人々が仲良く暮らす必要性が自然と高まります。例えば、飢えで苦しんでいる人がいるとしましょう。そして、その人の前をちょうど通りかかったあなたの手には、パンがあります。あなたもお腹が空いているので、自分のパンを分け与えるかどうか少し悩みます。 そんなときに、神様を信じている人であれば、パンを分け与える選択を取りやすいでしょう。「もし死後の世界があったとして、『あのとき、どうしてあの人を助けなかったのだ?』と聞かれたらどうしよう」と思えば、自分のパンを分け与える選択をするわけです。