誰も「プロ野球選手になるなんて思わなかった」 高校ではマネージャー→名門大入試は断念…湯浅京己(25歳)が“下剋上ドラフト”で阪神に入るまで
最後の甲子園は…最強のバッティングピッチャー
背番号の発表の場で俯く湯浅がいる。仁平は「なんであいつを強く推せなかったんだ」と後悔した。ミーティングが終わり、泣き崩れる友にキャプテンが後悔の念を絞り出す。 「ごめん。言えなかった……」 そのときこそ「俺の分も頑張ってや」と言葉少なだった湯浅は、練習が終わり寮に戻るといつもの前向きさを取り戻していた。 「俺、バッピやるから!」 甲子園期間中の湯浅は、監督の斎藤をして「マウンドで仁王立ちしていた」と言わしめるほど、バッティングピッチャーとして剛速球を投げ続けていた。 「俺の球を打てねぇで、甲子園で打てるわけねぇだろ!」 湯浅のボールを打ちあぐねる仁平らバッターに容赦ない檄を飛ばす。そのボール、その気迫。生き様を体現する湯浅に横山は唸った。 「最強のバッティングピッチャーだったよ」 甲子園での聖光学院は、2回戦で聖心ウルスラの2年生エース・戸郷翔征(巨人)ら好投手を打ち崩してベスト16まで進出した。チームの縁の下の力持ちを担った湯浅が“最強”と謳われたのは、彼に断固たる決意が芽生えていたことも大きく関係している。 湯浅と二人三脚で歩んできた岩永が言う。 「甲子園のメンバーに入れなかったことで、湯浅は本当の意味でスイッチが入ったんだと思うんです。バッピを頑張ったのはチームのためであることは当然なんですけど、次のステージが明確になったこともあったんです」 湯浅が定めた次のステージ。それこそが、「プロになる」だった。 <次回へつづく>
(「野球クロスロード」田口元義 = 文)
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