「長男にはマンション、次男には預貯金を」50代・仲良し兄弟の仲を引き裂いた「遺言書」…父の善意が仇となったワケ【不動産鑑定士・行政書士が解説】
「近くに住む長男には自分が住むマンションを、遠くに住む次男には預貯金を分ければ、兄弟で揉めることもなくスッキリ相続できる」と父は遺言書を作成し、すっかり安心しきっていました。ところが、子どもたちの思いを考慮せず、憶測で作成した遺言書のために、とても仲の良かった兄弟はまさかのドロドロの相続争いを迎えることになってしまったのです……。不動産鑑定士であり行政書士でもある竹田達矢氏が、事例をもとに解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
良かれと思い息子たちへの「遺言書」を作成したが……
都内の高級マンションで一人暮らしをしていた飯塚さん。70代半ばを過ぎて妻が亡くなり、ずいぶん落ち込んでいたが、少しずつ1人暮らしにも慣れて生活が落ち着いてきた。もともと料理をするのが趣味だったので暇があれば料理を楽しみ、現役時代からの友人との外出を楽しんでいた。 母の3回忌が近づいたころ、友人たちと飲みに行ったときに終活の話題で盛り上がった。すでに遺言書を作り、公正証書にしているという友人が何人かいて、自分もそれなりに財産があるし、子どもたちのためにも終活しなければいけない時期だなぁ、と思いながら帰宅。 数日後、ちょうど近くで終活セミナーがあったので、講師に相談して、公正証書遺言を作成することを決めた。法定相続人は近くに住む長男と遠い関西に住む次男の2人だけ。2人とも50代だ。財産を2人にどう分けたらいいのか考え、まずは自分の財産を整理してみた。 飯塚さんが住むマンションは、いわゆる億ションと言われる高級マンションで、10年以上住んでいるが、今でも1億円以上はするだろう。銀行口座は3つ。それぞれにそれなりの額が残っている。 次男は関西の会社に勤め、家族で暮らしているため東京には戻らないだろうし、マンションをもらっても困るだろう。長男は近くに住んでおり、母が亡くなるまで面倒を見てくれ、一時は一緒に住もうとも言っていた。 そこで相続財産の分け方を次のように決めた。 ・長男:マンション+A口座 ・次男:B口座+C口座 マンションは共有にすると難しくなるし、こうすればほぼ同額になるから良いだろう。そもそも仲がいい兄弟だから揉めないだろうと思い、友人2人に証人になってもらい、公証役場で公正証書遺言を作成してもらった。
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