【解説】今の40代・50代の老後の年金底上げをどう実現?
今の40代50代の人たちが将来受け取る年金額を底上げするために、どうするか、厚生労働省が検討しています。
■公的年金の仕組み
日本に住む人は、20歳になると年金制度に加入しなくてはならず、学生でも無職でも会社員でも、毎月決められた保険料を納めていて、こうして集められた保険料と税金をもとにして、高齢者などに毎月の年金が支払われています。 年金の制度は、働き方によって違っていて、会社員や公務員は厚生年金に入り、それ以外の人(自営業、フリーランス、フリーター、無職、学生など)は国民年金に入ることになっています。その2つの制度では、保険料や将来受け取る年金の額が違いますが、どちらも、保険料を必要な期間納めると、障害を負った時や高齢になった時に年金を受け取ることができます。
■物価や賃金が上がれば、年金も増えるが……
高齢者らが受け取る年金の額は、物価や賃金と連動して毎年度政府が決めています。(2024年度の基礎年金額は月に6万8000円、前年度よりも+1750円、+2.7%。厚生年金の人は、この基礎年金に加えて、働いていた時に納めた保険料に見合う年金額が上乗せされます) しかし物価や賃金が増えるのと同じ割合で、年金がどんどん増えるわけではありません。保険料を負担する現役世代は、物価も上がり、納めるべき保険料も上がり続ける、となると大変なので、この世代の負担を増やしすぎないために、高齢者らの年金の上げ幅を物価や賃金が上がる率よりも少し低くする制度が導入されています。(ちょっと難しいですが、この制度は「マクロ経済スライド」といいます。) これは若い世代の負担を抑えるためでもありますが、年金制度の中で、今の高齢者で資金を使いきってしまうのではなく、今の若い人たちが高齢になった時に年金をもらえるよう、必要な資金を残しておくためでもあります。 この「年金の増額を抑える」仕組みは、物価や賃金が上がる場合に使われますが、これまでデフレ経済(物価が下がる)の中では、しばらく使われないままでした。そのため、もともとの予定よりも、「年金の増額を抑える期間」つまり高齢者らに低めの年金で我慢してもらう期間が長引くことがわかっています。