【日下部保雄の悠悠閑閑】ラリーに付き合ってくれた2台のクルマ
先日のシャルマンで参加したクラシックミーティング・日本アルペンラリーにはクラウン・クロスカントリーRSの特別仕様車、LANDSCAPEで往復した。諏訪湖までのドライブにクラウンは楽ちんだ。 【この記事に関する別の画像を見る】 ランドスケープはクロスオーバーの車高を25mm上げて、オールテレーンタイヤを履き、マッドフラップもぶら下げるという、これまでのクラウンの歴史の中でも異色の存在だ。 ラリー会場でも注目で「ラリーだから乗ってきたの?」と言われた。いや、そうではないのですが……。とにかくさりげなく目立つのは間違いない。 4930mmの全長はやはり長いが、ベースとなったクロスオーバーと変わらない。一方全幅はオーバーフェンダータイプのモールのために40mm広い1880mmだ。最低地上高は140mmから172mmとなり、これだけでも悪路走破性は向上する。 エンジンはクラウンシリーズ最強の2.4リッターターボ・ハイブリッド。システム出力は349PS。フロントとリアに約80kWのモーターを持つ4WDだ。 4輪操舵のDRSは後輪操舵のおかげで市街地の取りまわしは割とよく、最小回転半径は5.4mと小さい。ただ、操舵力が軽く機敏に動き過ぎるのがクラウンらしくない。もう少し堂々としてほしいと感じた。高速の直進性もわるくないが、ステアリングセンターからの切り始めがもう少し滑らかだともっと気楽なのだが。 タイヤは横浜ゴム・ジオランダーA/Tの245/60R18を装着しており、オールテレーンとしては高周波音はよくカットされていた。マッドフラップがあげる風切り音は耳に届くものの、遮音性に優れておりクラウンらしい快適なキャビンだ。リアシートバックはランドスケープ専用の4:6分割可倒式。積載性は多いに高まって長尺物も収まる。このシートバックを通じて進入するロードノイズもあるがランドスケープの使い方としてプラスだ。 興味深いのはリアエンドに標準でトーイングヒッチを備えていること。許容牽引荷重は750kg。ジェットスキーやスノーモービルを引っ張るとサマになりそうだ。 ランドスケープは2024年の12月までの限定生産となる。 飛騨高山で行なわれた全日本ラリーの最終戦、M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズには、荷物もたくさんあったのでセレナ e-POWER LUXIONを借りだした。セレナの3列目シートは跳ね上げ式で荷室幅は制限されるが結構な荷物を飲み込めた。 市街地からの滑り出しは好調。試乗会でも滑らかさは確認済みだが、トルクの立ち上がる大きさは荷物を積んでも変わらない。発電専用エンジンは3気筒1.5リッター72kW。一方モーターは120kW/315Nmでセレナには十分だ。 LUXIONの専用装備ではプロパイロット2.0がある。高速道路での全車速追従システムで、渋滞時の停止から再スタートまで自動だ。停止時間が長いとアクセルなどのトリガーが必要だが楽ちん。追い越しもウインカー操作によって自動で行なえるが、こちらはまだ慣れない。障害物回避システムなどと組み合わされるころにはもっと利便性が高いものになるだろう。 駐車場ではキーと別のスイッチでクルマを前後させる機能も試してみた。バックドアから荷物を取り出すためにセレナを前に出すときに使ったが、障害物を検知すると自動で止まる。ホントに止まるのかと心配になったがホントに止まった。自動化が進む時代となりこのような装備が多くなったが、電動車だと相性が高い。ついでにセレナはリアガラスだけ開閉できる。ミニバンの中でもセレナだけの装備だ。 松本から高山に抜けるには安房峠がある。いつ終わるんだろうと思うほどカーブがある。昔はすべて未舗装の難所で辟易としたが今ではすべて舗装とトンネルで走りやすい。それでも長い峠で狭いところもあって大型車とのすれ違いではちょっと身構える。とはいえLUXIONの全幅は1715mmで心配するほどのことはなかった。 上り坂が連続すると3気筒エンジンが常に全力で発電する。さすがにウナリ音が耳につく。振動は小さいものの長い登坂路はe-POWERにとって苦手だ。LUXIONは遮音ガラスや吸音材などの採用で高速道路は静かなので気になるのかもしれない。 タイヤはブリヂストンのTURANZA。LUXION専用タイヤで205/65R16。乗り心地、直進性にアドバンテージがある。朝の早い3日間だったがラリーからの帰りも楽でした。 インターフェースも使いやすいがアナログスイッチをダッシュボード右下に配置したのはデザインに置いてけぼりにされたようで残念。 少し時間をかけて乗ると新たな発見もあり、乗れていないクルマとの出会いも楽しい。
Car Watch,日下部保雄