井浦新が”第二の鷹野”に…絶望するキャストとは裏腹に、視聴者のテンション爆上がりのワケ。『無能の鷹』第7話考察レビュー
菜々緒主演のドラマ『無能の鷹』(テレビ朝日系)が放送中。はんざき朝未の大人気コミックスを原作とした本作は、超有能そうに見える主人公・鷹野ツメ子が実は実は全く仕事ができないという、超脱力系お仕事コメディ。今回は、第7話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】井浦新が”第二の鷹野”に? 貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『無能の鷹』劇中カット一覧
鳩山(井浦新)が第二の鷹野に…。
あなたは人に「普通」と言われた時にどう思うだろうか。 世の中に無事に溶け込めているという安堵感、もしくは「特別」ではないと突きつけられる客観的意見に落胆の色を示すだろうか。おそらく、それは言われた時の状況や言われる相手にも大きく左右されるはずだ。 『無能の鷹』(テレビ朝日系)で鳩山(井浦新)は同僚たちから自身のモーニングルーティンを完璧に言い当てられてしまう。通常であれば何も恥じることではないし、むしろ皆が憧れる理想の動き方を鳩山がしている、ということだ。 しかし、妻が不倫をしているのではと考えている鳩山は、自分が普通すぎてつまらないから妻を不倫に導いたと結論付け、新たな動きを見せていく。 しかし、ルーティンを持つような人間が普通から逸脱するのは簡単ではない。そこで頼ったのがAIアプリ。ランダムな行動プランを提示してもらった結果、鷹野(菜々緒)を伴った鳩山はギャルカフェから熱波サウナ、編み物カフェ、特撮映画のエキストラまで挑戦していく。 会社の良心だった鳩山の姿は影を潜め、「何もかもがどうでも良くなってしまった」“第二の鷹野”だけが残された。
キモい=幸せなこと?
企業であるTALONにとっては新たなお荷物が誕生し頭を抱えてしまうだろうが、鳩山を演じるチャーミングな井浦新を見ていると視聴者的にはそんなことどうでも良くなってしまう。 ギャルとピースする写真から、サバゲーで崩れ落ちる姿まで、これまで(そしておそらくこれからも)見たことのない井浦の新たな一面をのぞかせてくれる。とりわけ肩をすくめながら「さあ、どうだろう」とおなじみの“鷹野ポーズ”をするシーンは営業部一同が絶望感を示しながら、見ているこちらはワクワクしてしまう奇妙なコントラストを生み出している。 ここまで鳩山が迷走するのは、愛する人のために動いているからだ。 恋をしていると盲目的に突っ走り、本来の自分を見失ってしまう。きっと人にはなかなか言えないような過去を持つ人も少なくないだろうし、その姿はキモいと言い換えることもできるかもしれない。 だが、それがなんだと言うのだろう。 キモく見えてしまうことだって他人に迷惑さえかけなければ別に悪いことではない。むしろキモいほどに人を愛する姿は美しいのではないだろうか。 第7話ラストで「キモいとは幸せなことなのですね」と総括する鷹野の言葉には考えさせられる。自分は人生でキモくなれた時期があるのか、キモくなれていない自分は人に本気で向き合えていないんじゃないかと、気づけば冒頭の鳩山に近い思考回路になっていることに気付く。 まるで禅問答のようなオチはいかにも無能の鷹らしい。