<争点>習近平は実は「反トランプ」?国際政治、経済・貿易面での「米国第一主義」への懸念、中国でも見方分かれる米大統領選
中国で飛び交う「バイデンの方がまだいい」議論
他方、上記のような見方とは裏腹に、トランプ氏の再登場は必ずしも中国にとって歓迎材料とはならず、かえってバイデン政権の継続のほうが、より望ましいとする指摘もある。 とくにバイデン再選支持論は、中国人専門家の間で少なくない。 その背景として、(1)トランプ氏は大統領在任中、対中製品関税を課したため、中国側も報復関税措置を打ち出し、両国貿易戦争に発展、今日までその悪影響が続いている、(2)中国で最初に新型コロナ感染発生が伝えられた2020年以来、トランプ大統領はコロナ対策失政で招いた米国民の不満の矛先をかわすため、対中批判をエスカレートさせ、両国間が極度に悪化した、(3)20年11月の米大統領選の際、中国側は「予測不能のトランプ」よりバイデン大統領の当選に期待しているとの米情報機関による分析結果が存在した――などの点が挙げられている。 さらに、AP通信は「中国はどちらかと言えば、トランプ再登場によるヒステリックな政策と米中関係の劇的変化ではなく、バイデン再選による安定的米中関係継続に期待している」(Shi Yinhong中国人民大学国際関係学部教授)、「中国共産党は、バイデン政権による西側同盟関係強化政策より、グローバリゼーションそのものに反対するトランプの方をはるかに憂慮している。どちらが望ましいというわけではなく、とにかく中国としては『改革開放』政策の継続とより一層の発展がカギとなっている」(Wang Yiwei同大学国際問題研究所長)などの発言も引用している。
中国では、バイデン大統領とトランプ候補を比較した場合、「どちらが好ましいか」ではなく、「どちらが“害が少ない相手”(lesser of two evils)か」の問題と受け止める専門家が多いという。 確かに、習近平体制にとって今最大の課題は、不動産不況などに象徴される難題を抱える経済の立て直しであり、そのためにも、内外含めたこれ以上の経済・貿易の混乱は何としても避けなければならない状況下にある。 この点、トランプ前大統領は在任中、対中関税など行き当たりばったりの政策が目立ったほか、中国も深いかかわりのある世界貿易の混乱を引き起こす場面が少なくなかった。