NHK「未解決事件」、SNSで犯人を割り出せるか?
2010年4月、殺人事件などの時効が撤廃された。東京・八王子スーパー強盗殺人事件(1995年)、世田谷一家殺人事件(2000年)なども対象になったが、いまだ未解決のままだ。グリコ・森永事件など数々の未解決事件を扱ってきたNHKスペシャルのドキュメンタリー番組「未解決事件」。3月22日に放送されたこのシリーズのスピンアウト「追跡プロジェクト」は、NHKとしては初めて視聴者から生放送で事件に関する情報を求め、その手段として電話だけでなく、SNSも試験導入した。SNSで犯人を割り出せる日は来るか?
「情報不足」を解消したい
3月22日に放送された「追跡プロジェクト」は73分。世田谷一家殺人事件など、3件の事件を取り上げた。再現ドラマやNHKが独自に取材して明らかになった新事実を組み込む構成で、スマップの草なぎ剛さんと同局の鎌倉千秋キャスターが「事件を思い出して欲しい。ささいなことでも情報をお寄せください」と電話やメールはもちろん、SNSなどで視聴者に情報提供を呼びかけた。 犯人を逮捕するのは警察の役割だが、逮捕につながる情報を提供するのは市民の力だ。未解決事件とは、捜査の進展がなく、固まって動かないケースをいう。「情報不足」を少しでも解消し、少しでも多くの力を事件解決に結びつけたいという狙いが番組にはある。 制作は、クローズアップ現代など報道番組を手がけてきた中村直文チーフプロデューサー(45)が指揮をとった。中村プロデューサーは、世田谷の事件の発生時、クローズアップ現代のディレクターを務めていた。 映像化された情報には、人の記憶や関心を呼び起こす効果がある。テレビ報道の力はそこにある。世田谷の事件現場を取材した記者からの情報は集まってくるが、断片的な情報だけで映像化が進まなかった。ようやく記者が入手した家の図面をもとにCGを作り上げ、犯行現場を再現したという経験がある。誰も気づかなかった手法だった。「取材人生のエポックでした。初動でかかわったときのその思いをいまもひきずっています」と言う。 未解決事件を解決するために何ができるのかと、中村プロデューサーは自分自身に問いかけてきた。「しかし、NHKは捜査機関とは違います。私たちがやれることは世論を喚起することです。事件の情報を視聴者に広め、NHKの取材力と合わせることで、解決に導きたい」。