都心高級エリアに1億円の戸建て購入「こんなはずでは…」愛妻の希望を叶えたマイホームに“失望”した理由
「窓から桜を眺めたい」という言葉の先にあったもの
この男性のおうちがなぜこのような残念な状況になってしまったのか。それはさまざまな要素をぶつ切りにしてくっつけただけの設計がなされたことが一番の原因ですが、「なんとなく条件を言っただけで、自分たちがどういう暮らしをしたいのか、何を望んでいるのかをきちんと考えていなかった」と男性は振り返ります。 この反省は本質を突いています。本来、家づくりとは自分と向き合うことなのです。家とは暮らしのための場であり、暮らしは人の営みであり、その人の性質や価値観がおおいに反映されます。理想の家を建てようと思ったら、「自分が何に価値を感じるのか」「どんな暮らしがしたいのか」を建築士としっかり共有して設計してもらう必要があります。 「桜並木が見えるよう、リビングには大きな窓をつけてほしい」とこの男性がリクエストしたとき、営業担当者や建築士がすべきことは、それをそのまま図面に反映することではなかったのです。 「窓をつけてほしい」とのリクエストは、表面的で物理的なニーズです。その思いの奥にあったはずの「リビングでゆったりとした時間を過ごしたい」「(桜を眺めて)癒やされたい、いい気分になりたい」といった真の要望(潜在的ニーズ)をくみとる必要がありました。それを怠ったために、男性にとって「こんなはずじゃなかった」家ができあがってしまったのです。
【著者プロフィール】内山 里江(うちやま りえ)
一級建築士 株式会社コモドデザイン代表 1972年、高知県に生まれ、12歳まで愛媛県で過ごす。子供の頃、建築家・宮脇檀氏の設計で建てた父の友人の家に感動し、いつか自分も建築家になることを夢見る。山口県の工務店に勤務して実地で経験を積み、一級建築士になる。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザイン。「家を単なる休む場所ではなく、遊べる場所に」をモットーに、付加価値を高める設計を提案し続けている。
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