中国の「人民元安」が止まらない!「この通貨安リスクはホンモノ」との指摘も…一人負け「習近平」が陥っている「窮地」
一人負けの「人民元」
6月に中国本土市場から330億元の資本が流出し、4ヵ月続いた純流入に終止符が打たれた。中国本土から香港への南方向き資金流出も1290億元に達した。 ブルームバーグによると、4月にドル高が進行したときは、当局は元高に向けて抵抗をつづけたが、5月にさらに元安となった。5月は米ドル指数が今年初めて、月間を通じて下落に転じ、約1.4%下落したタイミングだった。 これに対し、多くのアジア通貨が対米ドル1%以上の上昇を示したが、オフショア人民元だけは下落を続けた。人民元は他の通貨に対しても軒並み負けたかっこうだ。 こうしたことから、人民元安圧力は金利差など為替環境要因よりも、主に中国経済のファンダメンタルズから来ることが示唆されている。だからドル相場が調整されても人民元が大きく上昇するとは限らないのだ。 中国の不動産セクターが回復せず、北京と欧米との貿易摩擦が深まるであろうという予測がある限り、人民元は下がり続ける。また中国はここのところ明確な利下げ政策を継続してきた。これは当然、資本対外流出を促進し、さらに人民元の下げ圧になる。 UBSの元チーフエコノミストで、オックスフォード大学中国センターおよびロンドン大学東洋アフリカ研究学院のアソシエイトフェローであるジョージ・マグナスが、5月6日付のフィナンシャル・タイムズ紙に「人民元安のリスクはホンモノだ」と題する記事を寄稿し、「人民元は今後1~2年の間に下落を続け、経済的、政治的に大きな影響を及ぼす可能性がある」と分析している。 では、中国はこういう状況でなぜ、人民元を下げる調整をおこない、人民元下落誘導のシグナルを発したのか? 単純に中国の輸出産業を促進し経済の下支えをする、という経済的な理由だろうか。 後編記事「いったいなぜ…! 習近平が「人民元安」に誘導か…日本経済にも影響が及ぶ、中国の「隠された思惑」」で、人民元安を誘導する習近平政権と中国金融当局の「思惑」の真相に迫っていく。
福島 香織(ジャーナリスト)