中国で若者の就職難が深刻化 インフルエンサーの発言炎上の引き金に
【東方新報】中国では若者の就職難がますます深刻化しており、SNS上でもその現状が頻繁に話題となっている。そんな中、中国でフォロワー800万人以上を持つインフルエンサー「羊毛月(Yang Mao Yue)」が、大学生の就職活動を揶揄するような動画を投稿し、激しい批判を浴びた。この出来事は、就職市場における若者の苦境と社会の不安定さを浮き彫りにした。 羊毛月は、「最近タイムラインを見ていると、求職活動に関する投稿が多すぎる。北大(北京大学<Peking University>)の博士や武漢大学(Wuhan University)の修士すら仕事が見つからないなんて、本当にそんなに厳しいの?」と発言し、「00後(2000年代生まれ)が職場を改革すると言っているが、そもそも職場に入れないならどうやって改革するの?」と続けた。このコメントは、就職活動中の若者を揶揄するものとして受け取られ、即座に炎上した。 さらに、「みんながネット有名人になりたいと言い出したら、私たちの仕事が奪われてしまう」との発言も、職を得ることに苦労する若者たちの共感を得るどころか、逆に反感を買った。 この発言に対し、多くの若者が「現実離れしている」「社会の現状を軽視している」と批判を展開。SNS上では「何不食肉糜発言だ」と揶揄された。この「何不食肉糜」とは、中国の古典「晋書」に登場する逸話に由来する言葉で、「庶民が食べる米が足りない」という報告を受けた西晋の皇帝が、「それなら肉粥を食べればいいではないか」と言ったとされる話だ。この言葉は、特権階級や権力者が庶民の生活や現実を理解せず、見当違いな発言をすることを批判する比喩表現として使われる。今回の羊毛月の発言も、こうした歴史的な「現実離れの象徴」として揶揄された形だ。投稿はすぐに削除されたものの、批判の火は消えなかった。 その後、羊毛月は黒い服を着て謝罪動画を投稿し、「多くの人びとの感情を傷つけたことを深く反省しています。これからは慎重な言動を心がけます」と述べた。しかし、この謝罪に対しても「誠実さが感じられない」との声が相次ぎ、反感をさらに招く結果となった。 今回の炎上は、インフルエンサーの発言だけが原因ではない。背景には、中国での若者の就職難という社会問題が横たわっている。2024年の大学卒業生数は前年比で増加し、就職市場の競争は激化。特に高度な学歴を持つ若者たちでも仕事を見つけるのが困難な状況だ。 中国の若者たちは、自らの努力だけでは解決できない就職市場の厳しさに直面している。この問題は、教育政策、産業構造の転換、さらには国際的な経済環境の変化など、複数の要因が絡み合っている。 今回の事件は、SNSを通じて情報を発信するインフルエンサーに対する社会の目が厳しくなっていることを示していると同時に、中国社会全体が抱える若者の就職難という深刻な問題を浮き彫りにした。若者たちの不満と苦悩は、今や個人の問題にとどまらず、社会全体の課題として取り組むべきテーマとなっている。 羊毛月の炎上騒動は、一人の発言が多くの人びとに影響を及ぼす現代社会の特徴を再認識させるとともに、若者の未来に対する社会の責任について考えさせられる契機となった。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。